第12話 山中で仮眠

その男はトラックの運転手で大型トラックに乗り、関西と北関東を行き来していた。この話は関西から栃木へ行くときの話です。大阪で荷物を積み名阪から中央道へ入り中津川インターで降りて後は下道を走ります。夕方に木曽路へ入り長野県の諏訪市を越え群馬に抜けて行きます。諏訪から群馬まではいくつかの峠を越えますがその途中で旧道へ入り仮眠をとる事にした。何回かその旧道に入って仮眠をしてる場所で、山中で民家も近くになく車もほとんど通らないので仮眠には持って来いの場所でした。周辺には街灯も無くライトを消すと真っ暗です。

トラックの運転席の後ろはベッドになっているのでベッドに入り目覚ましをセットして寝ます。

目覚ましが鳴り起きます。トイレを済まし残りの行程を走ります。旧道から新道へ出てしばらく走り対向車のライトがフロントガラスを照らします。光の加減でフロントガラスに手形が浮かび上がって見難いなと思ってると、ある事に気づき冷や汗が流れます。その手形は10cmほどで、どう見ても子供の手形なんです。それも目線の高さでガラスに手を付いて中を覗くように両手の手形が付いてるんです。大型トラックの運転席の目線の高さって大人でも届きにくい高さなのに子供が登れる高さじゃない。

しかもよく見るとそれ以外にもフロントガラスのいたる所に手形が付いてるじゃないですか。うすら寒い物を感じながらも走ってガソリンスタンドに飛び込み給油とキャビンを洗ってもらいます。

これで手形は消えると思って安心して客先へ走り、時間があるので寝ます。朝になり起こされて荷物を降ろし、何気にフロントガラスを見たときに手形が一つだけ残ってるのに気づきタオルで拭いても消えません。おかしいと思い車内から拭くと消えって中から付けた手形! 他にもないかよく見ましたが消した一つだけが中から付けられた手形でした。ドアはロックして寝てるので人が入ってくることは考えられません。

「幽霊か? 手形以外には何もなかったしな」

あまり気にせずに帰りの荷物を積みに行きます。荷物を積んで、又関西へ戻ります。

今日は関西に入ってから仮眠を取ろうと考えながら走り、名阪国道に入りガソリンスタンドへ寄り風呂に入り仮眠することに、

「ここなら明るいし近くに人もいるので安心や」

カーテンを閉め寝ようとウトウトしかけた頃、突然キャビンが揺れました。同じ会社の仲間のいたずらだと思い、カーテンを開け周りを見ますが誰もいません。スタンドの灯りで周囲はよく見えます。なのに誰もいません。夢か?と考えながらもう一度寝る事にしました。

又、ウトウトしかけたところでいきなり胸に子供が乗ったような衝撃と重さが掛かった途端、耳元で


「あははははははは‥‥」


セットした目覚ましで目を覚ましスタンドの店内へ行きコーヒーを飲みながら店員と話していました。そこで店員が

「今日は子供さんを乗せてるんですね」

もう、話をする気も失せ隣のコンビニへ行きどうするか考えて

「線香利くかな?」

車内に戻り線香を焚きながら走りました。もう泣きそうな思いで。

幸いそれ以降は何もなかったので良かったんですが、一体なんだったんでしょう?

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