第11話 新潟のホテル

最近の話。

仕事で20日程出張へ、場所は新潟市から東へ少し行った辺りで結構な田舎でした。最初の2、3日は何事も無く過ぎて4日目の出来事です。その時は3階の部屋でシングルで予約していたのにツインの部屋を使わせてもらってました。なので喜んで、ゆっくり滞在していました。お風呂もユニットバスでしたがバスタブが大きくて手足を伸ばして入れました。

4日目もそれまでと同じように風呂に入りサッパリとしてから寛いでいました。季節は6月の終わり時分で陽も長く7時でも外が明るかったのを覚えています。やっと外が薄暗くなって来た頃

「コンコンコン」

突然ノックの音がしました。

8日目からは同じ会社の人間が一人合流しますが、今は自分一人で周りに知り合いは居ません。

「部屋を間違えてない?」

様子を見ていました。

「コンコンコンコン」

また、ノックの音がしました。

しかし、音がしたのはドアの方じゃなく反対側の窓の方から聞こえました。

「ここは3階だぞ!」

振り向き、まだカーテンの閉めていない窓を見ました。宵闇の窓を眺めながら近付き外を見てみますが、人が立てる場所も無く人もいません。

「他の部屋の音が聞こえただけだろ」

独り言のように呟きカーテンを閉めました。

「コンコンコン」

途端にノックの音が、確かにカーテンの向こうから聞こえました。他の部屋の音ではありません。

カーテンを勢いよく開けると、何もありません。

カーテンを閉めていると気持ち悪いので開けておくことにして、テレビを観ていました。それっきりノックの音は止んだので、それほど気にするでもなかったです。

テレビで時間を潰し夜も更けてきたので寝る事にし、電燈を消しベッドに入り寝ようとしたら

「コンコンコンコン」

再びノックの音が、窓を擬視していました。

「コンコンコン」

ノックの音がしますが窓の外には何も見えません。

「コンコンコンコン」

やっと気が付きました。どこをノックしてるか、窓の上から手が伸び窓ガラスの上の方をノックしてます。

「人じゃない!」

ノックだけだし良いかとヘッドホンをして寝る事にしました。

稲川淳二さんの怖い話を聞きながら寝ました。


どれくらい眠ったでしょうか、ふと目が覚めまどろんでいるとヘッドホンははずれ怖い話も終わってます。トイレに行って寝るかとベッドに起き上ったとたんに背中に何かがおぶさりました。

「うわぁー」

思わず声を発し、反射的に手を背中に回すと、グニャっと腐敗した肉に指がめり込むような感触があり背後から呻き声が聞こえ首を絞められました。


そのまま気絶したようで気が付けば朝でした。


急いで着替えてフロントへ行き昨夜の出来事を話しましたが、部屋が満室で部屋は変えられないと、それとその部屋は10年以上前に心中事件があり男の方は助かりましたが女性の方は亡くなられたそうで、その心中のあった日が昨晩だったそうです。

食堂のおばちゃんがそう教えてくれました。

「幽霊が出るのは昨日だけだよ。もう出ないよ。」

と言われ、確かにそれ以降何事も無かったです。

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