第10話 探検
小学生の頃、大阪の旭区に住んでた時の話をします。
近くに城北運河って汚い川がありました。上には阪神高速が走ってていつも薄暗い感じでしたが、魚が釣れるので釣りに行ったり土手際に秘密基地を作ったりして遊ぶ場所でもありました。
一度そこに架かる橋から飛び込み自殺もあり、少し怖い感じもしてたので一人で遊ぶことはなかったです。
その自殺のあった橋から163号線に向かって50m位のところに、よく覚えていないが3階建てか4階建てのビルがあり廃墟になっていました。
ある時「ひっきん」、「しょうさく」と三人で探検に行くことにしました。
一階は倉庫の様になってて2階分の高さがありその横に階段がありました。
階段はベニヤ板が打ち付けてありましたが、子供が通れる穴が開いててそこから入りました。
階段をワイワイと喋りながら上がっていき二階に着きました。
そこは広いフロアーとちょっとした給湯室とトイレがあり、フロアーには机や椅子も無くガラーンとしてて何か書類が散らばってました。面白そうな物も無いので上の階へ行くことにし、階段を上っていくと上の階が異様に暗いのです。
さっきまでのワクワク感は、肝試しのドキドキに変わりました。
階段を登りきると窓を塞ぐベニヤ板の隙間から射しこむ光で多少は見えます。このフロアーも2階と同じ作りですが、机が2つありました。
給湯室とトイレの前を通り机の方へ行くと
ジャー いきなりトイレの水を流す音がしました。
「やべー、誰かいる」
3人で机の陰に隠れ様子を見る事に、1分、2分、5分位たっても誰もトイレから出てくる気配がないんです。
何の音も聞こえてきません。
「逃げようか?」
「逃げよう}
「逃げよう、トイレの前は全開ダッシュな」
逃げようと立ち上がるとトイレの前におじさんが立ってます。
幸い後ろを向いていたので気付かれてない、また隠れました。
「トイレのドア開いた音した?」
「してない」
「逃げれんで」
「どっか行けよ」
隠れているが足音が聞こえません。まだ立ってるのか?何をしてるんやろ?
そぉーっと覗いてみます。
「あれ、おらんで」
「うそやー、足音せなんだで」
「はよ外でよ」
様子を窺いながら進んでいきます。
給湯室とトイレの前を通らないと階段に行けないので、ビクビクしながら進みますが幸い何事も無く階段に着きました。
下は明るいので恐怖心も薄れます。
ジャーー またトイレの水の流れる音が
「うわーー」
「なんでや?」
2階まで逃げ上を見てるとさっきのおじさんが階段の上に現れ睨んできます。
「あかん! 逃げよ」
我先に階段を駆け下ります。
その途中で
「もう来るなよ」
耳に聞こえるじゃなく、直接頭に響くような感じで伝わってきます。
「来ません」
「来ません」
ベニヤの穴を抜け外に出て自転車で逃げました。
それからもビルの前を通ることがありましたが、知らないうちにビルは解体されていました。
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