第9話 キャンプ

友人の山中亮太(仮名)の話。

中学3年の夏休みに友達と近くの川へキャンプを兼ねて釣りに行ったんです。

A君とB君と一緒に自転車で渓流を目指し山へ入っていき、めざす場所に着いたのは朝の7時頃でした。

今日一本目の沢です。川で餌になる虫を取り、釣りながら沢を上っていきます。

狙ってる魚は、ヤマメ、イワナです。

3人で釣りながら上流へこの沢ではヤマメがそこそこ釣れ、また次の沢へ向かいます。

次の沢を釣り上がって、降りてきたところで昼飯にすることにして準備を始めました。

飯盒でご飯を炊き釣った魚を塩焼きにして昼食をすませ、今日の予定を確認しました。

次の沢は途中で2本に分かれてるので、沢の入り口にテントを張ってから登ることにしました。河原から一段高い平らな所をキャンプ地に決めテントを張り夕食の魚を釣りに行く頃には、3時になっていました。

山の日暮れは早いので夏だけれど6時にはテントに戻ろうと話し合いで決めてから川に入りました。

順調に釣り上がり沢が2又に分かれてる場所に着くと、A君とB君が右の沢に入ってるのが見えたので自分は左の沢に入りました。

今日は他の釣り人が沢に入った形跡がないので良く釣れます。2又から100メートルほど登ったころ前方から人の話し声が聞こえてきました。

「なんだ先に誰か入ってるんだ」

ちょっとがっかりしながらも釣っていました。友達は右の沢にいるので声は聞こえません。

上流に大きめの岩があり少し迂回して行かなければならない所があり、話し声はその先の方から聞こえます。岩のせいで人影は見えません。

その岩を迂回して先へ進むと話し声も大分先に進んでいて、相変わらず人影は見えません。

結構釣れていて

「人が入った後なのによくつれるな?」

と、思いながら進んでました。

もう100mも進むと高さもある滝で行き止まりです。ロープや登山道具が無ければ越えられません。

釣りながら進んでると滝の音が段々大きくなってきます。

相変わらず前方より話し声がします。もうすぐ滝つぼで行き止まり、先行してる人はどんな人かと思いながら滝つぼへ到着しました。

「うそ!どうやって進んだの?」

話し声が滝の上から聞こえます。ここには何度も来ていて何度か崖を上ろうとしましたが、こんな短時間で滝の上に上がれる訳がありません。

少しあっけにとられてると、今までは声は聞こえてたんですが内容が聞き取れなかったんです。

それがここは滝の音もかなり五月蠅いのに話し声の内容が聞こえるんです。

自分の事を話してるのが分かったんです。

気持ち悪さも感じ急いでテントまで戻りました。

友達二人はまだ戻ってませんがテントまで戻って少し気分が落ち着きました。

晩飯の用意でも始めるかなと、魚をさばき塩焼きの準備とヤキソバの準備を始めてると二人とも帰ってきて晩飯にしました。

ヤキソバを食べながらさっきの出来事を二人に話しましたが、

「そんなバカな!あの滝はそんなにすぐに登れないって」

二人ともその滝を知ってるので短時間で登るのが無理なことを知っています。

話し声が何だったのか結論が出ないまま話は別の話題に。


時間は過ぎ、食器や食べ物を片付け受験の事などを話して寝る事にしテントに入りました。ランタンを消し明日の予定などを話してると、川の音に交じり足音が聞こえてきました。下流から上流に向かい一人の足音じゃなく数人の足音と話し声も聞こえ、みんな黙って聞いています。

ヘッドランプの灯りは見えません。A君がテントのファスナーを開け外を覗きますが、直ぐに首を引っ込めファスナーを閉め寝袋にもぐりました。

「A君何?どうした?」

返事はありません、寝袋の中で震えてるのが伝わってきます。

いつの間にか川原を歩いてた足音がテントの周りをグルグルと周ってます。

灯りは一切ありません。森の中なので真っ暗です。なのに灯りもなく歩き回る人達、三人とも声も出せません。

暫くすると足音は消えていましたが、話し声が全部は聞き取れなかったが

「この三人も連れていくか‥」

「見られたのか?」

「まだ、子供だしいいんじゃないか?」

など、何か相談してる感じでした。

どれだけ時間が経ったのかテントが薄明るくなってきました。

話し声は知らない間に消えています。

テントの中は三人の息遣いだけ、外は鳥の鳴き声がしだしました。

完全に外が明るくなってから三人で外へ出ました。一瞬三人で顔を見合わせました。

「なんで?」

三人で叫びました。


そこは最初にテントを張った場所ではなく、昨日のあの滝つぼのそばに移動していたのです。


急いで片づけ山を下り人のいる所で、やっと今の出来事を話し合い出来ましたが結局訳が分からないままです。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る