第8話 出社拒否
某会社に勤める友人から聞いた話です。プランニングの会社でとある都市にあります。
友人はその会社で課長を務めていましたが、その時の部下に起こった話です。
その部下は「田中」といい、もう入社して5年たちそこそこ仕事も出来る男で、友人とはたまに飲みに行ったりもしてたらしい。明るい性格で責任感もあり仕事をサボる事も無かったらしい。
友人が出勤するともう田中はデスクについていた。
「おはよう」友人が声をかけると、田中が神妙な顔をしていた。
暫くしてから気づいたように
「おはようございます」声が疲れているように感じます。
「昨夜は徹夜したのか?」
「最後の詰めで遅くなりまして、終電に間に合いませんでした」
労いの言葉を掛けて仕事の準備を始めます。
昼のチャイムが鳴り、
「田中、一緒に昼飯行くか?」
「お供します」
昼食を食べながら田中の彼女の事など結婚はいつぐらいを考えてるのかなど、
仲人を課長にお願いします。
など話していました。
田中の将来は明るく見えていました。
次の日友人が出勤し、始業時間になりましたが田中の姿が見えません。出張の予定も無く連絡もありません。
友人が田中の携帯に電話をすると
「すいません、高熱で動けません。連絡遅れてすいません。」
疲れで風邪を拗らせたと思い
「今日は休養するように」
電話を切りました。
次の日も田中は出社して来ません。
始業時間になっても連絡が無いのでまた電話を掛けましたが、呼び出し音は鳴っているのに出ません。折り返し掛かってくるかと電話をきり業務にかかりました。
その次の日も彼は出勤して来ませんし連絡もありません。
部下を連れて田中の住むアパートへ様子を見に行くことにしました。
よくある2階建てのアパートで、彼の部屋は2階の角部屋でした。
部屋のチャイムを鳴らしますが何の反応も無く、ノックして名前を呼んでもダメでした。窓を見てもカーテンが引かれたままです。
携帯に電話してみると部屋の中から呼び出し音がしています。
これは何か有ったのかも知れないと、アパートの管理会社に連絡して一緒に部屋へ入ることに。
管理会社の人が来てドアのカギを開けドアノブを回しますがドアはビクともしません。仕方なく工具を使い無理やりに開けました。
いくら開けようとしても開かないはずです。ドアは内側からガムテープでキッチリと目張りされていたんです。
玄関に入り声を掛けますが返事はありません。
中へ入ってみると窓もすべてガムテープで目張りされています。
部屋に田中は居ません。
テーブルの上には携帯電話と財布、部屋の鍵があり部屋は内側からすべて目張りされた状態で田中はどこへ消えたのでしょう。
それ以来、田中は一切姿を現していません。
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