第5話 深夜のドライブ

10年ほど前にある女性とお付き合いしていました。その時の不思議な話をしたいと思います。彼女は京都に住んでいて彼女の仕事の都合で深夜にドライブすることが結構ありました。

季節は秋も終わりコートが要るかな位の時期で琵琶湖から京都へ帰る時に体験した話です。

車にはナビが付いていなく記憶と勘でドライブしていました。毎回微妙に違うルートを選んで走ったりしていたので、その日も何を考えるでは無く走らせていました。

「信楽でも回って帰るか」軽い気持ちでハンドルを握りルートを考えていました。

その時に選んだルートは信楽から宇治へ抜ける帰り道でした。ほぼ山道ですのでそこへ入る前にコンビニに立ち寄りトイレを済ませ飲み物を買いました。

彼女が好きな曲を入れてきた「MD」を聞きながら、彼女と何気ない会話をしながら山に入っていきました。次第に民家は無くなり街灯もなく暗い道をドライブしていますと最初はセンターラインのあった道がセンターラインもなくなり、やがて車一台が通るのがやっとな道に変わりました。

「曲がる所を見落としたか?」

「道を間違えた?」

などと軽く考えていたのですが助手席の彼女も少し不安な様子で

「この道大丈夫?帰れるよね?」と聞いてきます。

「大丈夫、大丈夫。」と返事を返し何処かへ出るだろうと考えていました。

道は登りでウネウネとかなり上ったと思います。

「そのうちに下り坂に変わるだろう」一応舗装はしてあるし、まだそんなには心配もしてませんでした。


「キャー!」彼女がいきなり悲鳴を上げ腕にしがみ付いてきました。

「何?どうした?」聞くと

「森の中に誰かが立ってた」と声を震わせ言いました。

「こんなに暗いのに森の中が見えたの?」

「体の周りが仄かに明るかったから気付いたの」

「前を見てたから気付かなかったけど、この辺は家もないし見間違えじゃない?」

「確かに見たの!」

こんなやり取りをしながら進んでいました。人じゃないよな、幽霊?半信半疑ながら彼女を落ち着かせるために話題を変え話続けました。

カーブを周った先に急に着物を着た女性がヘッドライトに照らされ思わず急ブレーキをかけ、ブレーキが間に合わない距離でしたが衝撃も無く止まりました。見渡しても女性の姿は見えず降りて確認することに、車に当たった形跡は見られず周囲を見てもそれらしき人も見当たらず急に恐怖がこみ上げてきました。急いで車に戻ると彼女は震えています。たぶん同じ人を見たんだと思い話しかけました。

「着物の女性だったよね?」

「そう、でも車に当たる瞬間に消えたの」

「消えた?」

「そうよ、消えたの」

言葉も失くし走り出しました。

まだ道は登ってます。彼女は腕にしがみ付き目をつむっています。やっと登りが緩くなってきました。峠を越せると思ったのも束の間、前方にフェンスが見えました。

「行き止まりかよ」

アンテナ施設で行き止まり、最悪です今来た道を戻らなければ帰れません。Uターンしようとしてるとフェンスが「ガシャーン、ガシャーン」と鳴り

彼女は凍り付いています。そちらを見るとさっきの着物の女性が施設の中を移動しています。

もう考える余裕はなく、一心に山道を引き返しました。

その後無事に彼女の家にたどり着き事なきを得ました。


あの着物の女性が何者なのか、最初の人影と同じなのかは分かりません。

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