第8話
中学の頃のクラスメイトと会うのはいつぶりだろうか、クラスメイトの何人かは成人式で面識はあったが、今日会う女性は本当に十年ぶりである。
自分の記憶の限り碇優花と一番親しかった女性、昼飯はいつも席を寄せ合って食べていた高梨と喫茶店で会う約束をした。
高梨とは当時、そこまで仲よかったわけじゃないが何度か話をしたのもあって覚えてくれてたのが救いだ。
狩村は今、家で監視カメラの設置や警察に相談をしてくれている、だから俺も頑張ろうと気合を入れた時、喫茶店のドアが開き女性が入って来た。
そしてこちらに目を向け、何度かしぶしぶ見て。
「もしかして…………くん?」
「高梨か……?」
そういうと高梨は苦笑い、しながらうん、と答え俺の向き合うよう前に座った。
「それで……何か要があるんでしょ……?」
彼女の反応は久し振りにあったクラスメイトというよりも何か重要な話をするのだろうと身構えていた。
鋭い。
「少しな」
「なんか、雰囲気変わったね……昔はもうちょっと子供っぽかったよ」
雰囲気が変わったと言われ、一瞬そうか、そうかも、と自問自答した。昔の自分はそんなに子供っぽかったのか。
「おま……高梨も大人になったように見える」
「ありがとう。それで要件は?」
心臓が高鳴る。鼓動が早くなる。
俺は一旦深呼吸をした。
聞くんだ。
「碇…………優花の事を聞きたいんだ」
高梨の持つコップがテーブルの上で倒れた。
「すんません、フキン」
俺は濡れたテーブルを店員が用意してくれたフキンで拭き取った。高梨はそれからしばらら体を抱きしめるように身震いした。
「なんで……今更その話?」
「事情があるんだ」
「その事情って何?」
言っていいのか迷う。俺が迷ってる中、高梨は涙を流して他人から見ると別れ話を切り出しているようだった。
俺は青いハンカチを渡した。
鼻かまれた。そして彼女の話に全ての意識が奪われることになった。
「何で……何で優花は死ぬことになったの?」
「し、死んだ……?」
死ぬ事になった? どういう事だ。優花は暴行された時は命に別状は無かったはずだ。
胃が逆流する。
「うっ…………」
這い上がってきた液体を無理矢理押し込んだ。
「……どういう事なんだよ」
「優花は一年前に…………『自殺』したの……」
啜り泣く彼女にまたハンカチでも渡せばよかったのに俺は唖然としていた。
謎が余計遠くなって、もしかして彼女の霊が呪いに来たんじゃないか。
いやそんなわけない、彼女の名前を使った誰かがやっているに決まっている。誰だ? そいつは誰なんだ。
「ねぇ……なんで優花が死ななきゃならなかったの!? 犯したそいつが死ねばよかったのに……! 優花の兄さんだって殺したいほど憎んでいるのに!」
その言葉が俺の心に突き刺さった。俺のせいだ、俺のせいなんだ。
「ごめん…………ごめん…………」
俺はただ、誤る事しかできなかった。子供のように許しを得ようとするように。
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