第6話

「先輩どんな感じだった?」

 マンションに近づいて来た頃狩村に質問された。どんな感じだったと言われてもあまり思い出したくない。

「酷かった。顔色も悪かったし生気も感じなかった」

「これからどうなるんだろうな……先輩にも家族とか親戚がいるんだし、ただの友達程度の僕たちがこんなに傷ついてるんだ、家族たちはもっと辛いだろうに……」

「そうだな……」


 マンションの駐輪場に自転車を停めて、マンションのエレベーターに乗り四階まで上がる。

「先輩も……相談してくれたらよかったのにな……」

「…………」

 四階につき、エレベーターから一直線の三番目のドアに自分たちの403号室がある。

 今日はもう疲れた。ただ寝たい一心で鍵を開けようとしたが。

「え…………」

 狩村が指を指す、俺も鍵を指す前にドアを見て留まってしまった。

 驚く声さえ出なくなってしまった。

 ドアに首が逆方向に曲がった猫がガムテープで貼り付けられていた。ガムテープの上に四という赤い文字が書かれてあった。

 俺はこの状況にペタリと腰を抜かしてしまった。

 まだ、復讐は続いている。

 次は俺なんだ。

 俺はドアを乱暴に開け、靴を放り投げるように捨てて自分の部屋に入った。

 そして、恐れながらもスマホを取り出し、先輩から貰ったURLを検索しようとした。


 本当にこの先を見ていいのか、後悔しないのか。

 震える手で絶版サイトをスクロールした。一番下の絶版候補には菊池さんの下には名前が書いてあった。

 俺のだった。

 スマホを放り投げ、笑った。

「ははは……!」

 忘れようとしてた。記憶の底に蓋をしようとしてた。だから次は俺なんだ。

「あぁぁ…………」

 俺は泣いたらいいのか笑えばいいのか分からなくなった。

「どうしたんだよ! ここを開けてくれ!」

 ドアの奥から叩く音が聞こえる。狩村だ。

「俺の……せいなんだよ!!」

「どういう事なんだ!? とりあえず開けてくれよ!」

 それ以上、何も言えなかった。

 俺は死にたくない。けど彼女も俺に助けを求めていたはずだった、俺はそれを見捨てたんだ。

 何も考えたくなくなって俺は何度も自分の頭を叩いた。

「くそっ!! くそっ!! くそぉぉぉお!」

 何分か経った後、殴るのに疲れ果てた俺はその場で目を閉じた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る