星状六花のハナ

安芸咲良

序章

 銀世界というものを、赤月花あかつきはなは初めて見た。

 大地は白一色。ところどころにある木々は、雪化粧を被っている。空と地平線の境界さえあいまいだ。また雪がちらつき始めた。

 当然、薄着で来るようなところではない。

 だというのに、花の格好はこの場に似つかわしくなかった。

 かろうじて冬服に衣替えしたばかりだったから、制服のブレザーではある。しかし中はカッターシャツ一枚だ。なにより、花は靴を履いていなかった。

 靴下の薄布から、じんじんとした冷たさが伝わってくる。

「ここ、どこなの……?」

 こんな場所、知らない。花の住む町に、こんな開けた場所などない。

 花のつぶやきは、雪風に消えていった。

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