4-5 第3戦 その1 想定外の事態
三回戦は、シャーロットとクリスティーナとカレンが出る予定だ。決勝戦はカレンの代わりに僕が出る。メンバーの配置は想定通りに進みそうだ。
僕達は自分の試合にスムーズに出れるように、ひとつ前の試合の時点で闘技台の東側にスタンバイした。
「さて、次の相手は、向こうで待っている人たちね。」
「軽くひねってあげますわ。」
なんとも心強いお言葉だ。
「そういえば、向こうで待っている魔導士の格好をした女子、こっちをにらんでいますわね?エリック何かした?」
「え?何もするわけないじゃないか。知らない人だよ。」
なぜだろう?本当に何もしていないのに、僕は動揺している。
「あの方、私知っています。だって・・・」
そうカレンが話していると、僕たち誰もが想定していなかった事態が起こった。闘技場の上で試合をしている選手の一人が、相手武道家の攻撃を顔面にまともに受けた後、こちらに投げ飛ばされて来たのだ!
その選手は、カレンにぶつかった。
「あ、あの、大丈夫ですか?」
カレンはその選手の顔をみた。顔中が血だらけになっていた。
「あ、血。。。」
パタ。。。
カレンはそのまま倒れた。確かに、この見た目は僕でも引く。そして、血にまだ慣れていないカレンだと。。。
「カレン、しっかりしろ!」
全く動かない。気を失っている。
スタンバイしていた治療士が来た。血だらけの選手は回復魔法で大丈夫だ。でもカレンは気を失ってたままだ。
「試合終了。勝者は【衝撃の騎士団】だ!」
前の試合のベルが鳴った。先ほど飛んできた選手が最後の一人だったようだ。
「見て、さっき私たちをにらんでいた女子、こっちを見て、にやけてるわ。」
「どういうことですの?」
次は僕ら【キューティーナイト】の番だ。カレンが出る算段なのだが、この状態、かなり厳しい。
「次の試合に移ります。選手は闘技場に上がってください。」
相手選手が上がるのが分かった。あれ、先ほど、血まみれの選手をカレンに投げ飛ばした男の武道家と、女性魔法士と、先ほどにやけていた女子がいる。
「もしかして、カレンが血に弱いことを知って、ワザとやったのではないでしょうか?」
「そういえば、あの人私見たことがありますわ。たしか・・・マルチス正教会の幹部の娘【リンダ】ですわ。1年先輩ですね。教皇の娘のくせにとか言って、何かとカレンに突っかかってきていて、困っている話を聞いたことがありましたわ。」
「そうです、2年前の大地震で【眠れる聖女】って呼ばれたとき、あからさまに嫌味を言いふらしていました。まさにあの人です!」
そんなことがあったのか。たぶんカレンは悪いことはしていないはず。たぶん、相手選手の嫉妬だろう。
今だカレンはまだ意識がない。
「カレン、大丈夫?」
「凄い汗よ!」
治療士は彼女を診たのだが、外傷が無いので、気を失っているだけだと、元の場所に戻って行った。
「東側の選手、早くしなさい。闘技場に登らないと失格ですよ。」
「仕方がない、カレンの代わりに僕が出る。」
そう言って、急遽シャーロットとクリスティーナと僕の、決勝戦を想定したメンバーで対応することになった。つまり、この試合に勝ったとしても、決勝は僕は出れないのだ。
「ふん、そのまま棄権すればよかったのに。」
その女子は、明らかに僕らを敵視している。
「では、準決勝を行います。東がチーム名:キューティーナイト、西がチーム名:衝撃の騎士団です。」
「悩んでも仕方がない。勝たないと意味がないからな。」
自分に言い聞かせる。
「試合開始します!」
開始ののベルが鳴った。すると、
「うう、エリック・・・」
なんと、カレンが目を覚ました。
「カレン、大丈夫か?」
闘技場の上にいた試合の事など忘れて、僕はカレンの方に振り返り、カレンに声をかける。
「危ない!」
シャーロットとクリスティーナは、僕に飛びかかった。三人は闘技場に倒れた。すぐ上を魔法【エアーカッター】か通り過ぎる。
「なにボーっとしているの?試合中よ!」
「なんとか直撃は免れましたね。」
「す、済まない。。。」
僕らを敵視している魔法士は、試合にに集中していなかった僕に向かって魔法を仕掛けてきたのだ。そもそも、僕は魔法防御力がとてつもなく高いので、モロに受けても、大したダメージは受けないのだが、彼女たちは、そんなことお構い無しに、助けてくれたのだ。
「全部避けきれなかったようだわ。」
シャーロットは腕や足に数十か所の切り傷を受けていた。クリスティーナはローブが切れ裂かれて穴が開いている。
「二人とも、大丈夫か?」
「誰に対して言っているのですか?この位、蚊に刺された程度わよ!」
「ちょうど暑いと思っていたところです。」
彼女たちは強がりのセリフを言う。
「まあ、カレンが気になるのは分かるわ。ここは私たち二人に任せて、カレンの側に行って。」
「そうですわね。カレンの側に行ってあげてください。」
「でも、僕が抜けたら。。。」
「心配無用よ。これくらいで負けるようでは、王女の名が廃るわ!」
「ジル様を目指すなら、これくらいは出来ないと。」
「それに」
「カレンのをいじめる人は、友達の私たちが許せませんわ!」
彼女たちの決意が見えた。
「分かった。あとは頼むよ。」
僕は、闘技場から降りた。観客席からはブーイングが鳴り響く。僕はそんな周りの声は気にせずに、カレンのいる場所へ行った。
「カレン、大丈夫か?気分はどうだ?」
「う、エ、エリック・・・」
まだ、完全に意識を取り戻したわけではない。僕はカレンを看病し続けることにする。
「では、私たちはこっちを終わらせましょう。」
「そうですわね。私たちも早くカレンのところに行きたいですわ。」
彼女たちは、お互いを見て確認しあった。
「カレンの仇!」
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