小川で少年と少女(幼女?)が濡れる話
真夏の日光を反射し、無色透明な宝石のような輝きを見せる幅一メートルもない浅い小川。その水を両手ですくい、「えい」という掛け声とともに麦わら帽子の少女は小川の脇に立つ一本の大樹に放り掛ける。
「あぶね」
大樹の影に立っていた三白眼の少年は片足を上げて少女が放った水を避ける。
それを見て少女は口に手を当てて笑った。
「ふふ。涼しいのに」
「日の光に当たりたくないんだよ」
「日陰って蒸し暑くない? ほらほら、こっち来なよ」
少女は悪戯好きのする笑みを浮かべながら、小さな手を使って少年に水を掛けようと何度も小川の水をすくい、放る。
「ちょ、やめろって」
少年は顔をしかめつつ、小さな動きでそれらを避ける。
「あはは、えいえーい」
すっかり無邪気な笑顔で少女は少年に水を放り掛ける。少年はそれに苦笑しながら、やがて笑い声を上げて足をもつれさせて地面に倒れた。その顔に水が掛かる。
「だーも、俺の負けでいいよ」
「いえーい、わたしの勝ちー」
少年は日光避けに使っていた上着を靴や靴下と一緒に脱ぎ捨て、ジーンズの裾を捲り上げながら小川の水面を爪先でかき混ぜる。
「思ったより温いのな」
「えー、冷たいじゃん」
少女は川底の石を足の裏で転がす。
「あー、底の方が結構冷たかっ!」
「ひゃあっ!」
川底の滑らかな石に足を滑らせ、少年は背中から小川に突っ込んだ。
大きな水飛沫が、木陰に置かれた少年と少女の上着や靴をびしょびしょに濡らす。
「あーあ、やっちゃった」
少女は笑いながら少年に腹からのしかかり、自分から服を濡らしていく。
「あーこら! ったく……叔母さんに怒られる」
「あはは、従妹の世話は大変だね?」
「そう思うなら大人しく家でゲームしようぜ。俺は運動不足なんだよ」
「外でおにいと遊ぶ方が好きー」
「俺は中でなつめと遊ぶ方が好きー……」
少年は水の中から起き上がろうとするが、少女ごと身体を持ち上げることが出来ずに再び小川に身体を突っ込んだ。
先程よりも小さな水飛沫が舞う。
「背中あづー」
少女は少年の隣に転がり落ち、同じように仰向けで小川に寝転がる。
「川の水飲むなよー」
「お腹壊すからもう飲まないよ」
「飲んだことあるのかよ……」
少女は少年よりも上流で、小川に仰向けで寝転がる。
「きもちいー」
「わかる」
少女は小川の中で目を閉じ、小さく笑みを浮かべながら寝息を立て始めた。
「あー、おいこら、なつめ。……なつめ?」
「…………」
「マジか」
少年は身体を起こし、少女を見る。少女は身体の半分以上を小川に沈めながら、まぶたを閉じ胸を小さく上下に動かしていた。
「ほらー、起きろー、風邪引くぞー」
少年が声をかけながらつついても揺すっても、少女は寝息を立てるだけで反応を示さない。
「あーもう……だから子守りは嫌なんだよ……」
少年は小川から上がると、上着を袋代わりに靴や靴下などの荷物を纏め、未だ眠る少女と一緒に背負って帰路を辿った。
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