第2話その少女、チェリー

赤い煌びやかなドレスに、黒いレギンス、赤い靴。

黒く長い美しい髪に真っ赤な瞳。

────彼女は、チェリー。

殺し屋だ。

彼女は不機嫌に銃の手入れをしていた。

先程のターゲットのせいで返り血が銃に付いてしまった。

気に入っている銃なのに。


────まあ、死んだ人間に対して言うだけ無駄か。


さて、それはともかく彼女が不機嫌な理由はもう1つあった。


……任務遂行場所に、あの怪盗が現れるらしい。


彼女と同じく犯罪を犯す子供……その名も「怪盗アップル」。


美しい金髪に宝石のような碧い瞳は見る者全てを魅了する。

また、とんでもなくキザ男で自身のファンの事を子猫ちゃん、と呼ぶ始末。


表立って大胆かつ華麗に犯罪を犯す彼に比べ、彼女は陰湿とでも言うべきだろうか?とにかく彼とは正反対だ。


そのせいか彼女はアップルが嫌いである。


そんな彼と場所が被ってしまった。


これはどうしようか……1人彼女は思案する。

依頼は断ってもいい。しかし……出来れば任務遂行したい。

それに彼と場所が被ったから、なんて理由で仕事を投げるのは彼女としては癪だった。


────どうせ、会わないだろう。


彼女はそう結論づけた。


声が聞こえても、多少は我慢してやろう。


自分は迅速に、かつ正確に任務遂行をしてくればいい。


アップルに会ってしまうなんて、考えすぎだ、きっと疲れている。


そうだ、今日は紅茶じゃなくてハーブティーを淹れよう。


少しでも回復しなければ。今夜の任務に影響が出たらこまる。


そう考え、彼女は立ち上がった。


アップルの意図にも気付かずに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る