怪盗アップルと殺し屋チェリー
狂人
第1話1人の夜
とある、ホテルの一室にて。
「ひ、ひいいいい!」
男が腕の力だけで何とか逃げていた。
腰が抜けたのでは無い。脚が無くなったのだ。
少女の持っていた鉈によって。
もういつ出血多量死しても可笑しくない。
しかし、男はまだ逃げていた。
まだ、助かるかもしれないと淡い期待をしていたのだ。
不幸中の幸いか、彼女が追ってくる気配は無い。
大丈夫だ、俺は天を味方につけている男だ。
孤児院出身だったのに会社を建てその会社は今やこの国トップレベルの会社になっている。
社員からの信頼も厚いし、家族も出来たんだ。
まさに、幸福な男であるこの俺が。
こんな所でくたばってたまるか。
────そう思った矢先。
目の前のドアが開いた。
助けを求めようと顔を上げた男の顔面を、少女は蹴りつけた。
「か、はっ」
「…ゴキブリ並の生命力ね。まだ死なないの。」
少女は男を冷たく見下ろすと男の首を鉈で刺した。
…これで大丈夫だ、任務完遂。
────同時刻。
「やぁやぁ皆ー!昨日ぶりだねえ!」
脳天気な少年の声が夜の街に響き渡る。
しかし声に反し彼はキレッキレの蹴りを食らわしていた。
尚、相手は警官である。
「オレがいなくて寂しかったー!?もう、皆寂しがり屋だなぁ!」
彼は軽薄な口調でそう言うとシルクハットを取った。
そしてシルクハットの中からリンゴを取り出した。
最も、そのリンゴはキラキラと光っていたが。
「じゃあね!オレの可愛い子猫ちゃん!」
爆発音が響き渡ると少年は飛び上がり、館に侵入した。
「お宝は〜、おっ!あった!」
少年は走ると手近な展示品で警官の頭を殴り倒しながら駆け寄った。
「これが、チェリー…!」
彼は宝を見て歓声を上げた。
ヴーヴー
あ、やっば。
気付いた時にはもう遅い。
警官達に囲まれてしまった。
「大人しく両手を挙げろ!」
「すぐ下げてもいいなら挙げるね!」
そう巫山戯た事を言い、彼はチェリーを持つと入っていたガラスケースを投げた。無論、真上にである。
「…?」
警官達が困惑する。
彼を見ると笑っていた。
「あはは、3日程の辛抱だからさ我慢ね!」
その言葉の意味は後々分かることになった。
そのガラスケースに気を取られている隙に少年は大きな包みをぶん投げた。
そこに少年は弾丸を1発撃ち込んだ。
途端、何かが辺りに散らばる。
それは────
唐辛子の粉であった。
「ああああああ!」
警官達が苦しみ始める。
しかし危険を察知し、逃れた警官もいた。
その警官には顔面にリンゴを投げつけておいた。
────これで今日は終了かなあ。
そう考えた少年はじゃあね〜と軽く会釈すると飛び降りた。
…2人の夜は、もうすぐ訪れる。
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