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 その姿は男のものとは思えないほど美しく

 姫の如く可憐に輝く奇跡の美貌

 反するは気質、残虐の申し子

 悪辣なるはまさに、御伽おとぎを彩る魔女の如し


「至宝」「ラブリー・アーモンド」「イヴの一番可愛い息子」


 かぼちゃ組組長 <姫喰い> シロー




 死人しびとのように黙して語らぬは

 真にしてしんなる兄の証

 かつて組を裏切った不埒な兄弟たちを

 ことごとくパン屑へと変え街にばら撒いた"最強のハンス"


「4代目ヘンゼル」「不動の長兄」「完全なるハンス」


 野いちご組組長 <死に別れ> Rアール




 彼は美しさを守るもの

 この世で最も美しき姫の、生くるも死せるも愛するもの

 この世で最も美しき街の、生くるも死せるも愛するもの

 ただあるがままを愛するがゆえ、狂った王子


「死神」「上位者」「全てを知る者」


 りんご組組長 <怪王子> 刈子カルコ




 かつて誰よりも深く呪いを受け

 蛙の沼の底で地獄を見た

 そしてただ一人、その罪を全て払い落とした稀有なる力士

 彼こそ男の誉れ、姫に認められた唯一の雄姿


「帝王」「理想の男」「大横綱」「最初の王子」


 ちしゃ組組長 <グレイト・ファザー> 黒風くろかぜ




 迎え入れるは4人の姫君

「かぼちゃ組」は <灰かぶり姫> シンデレラ

 青いドレスは今日も美しく

「野いちご組」は <とても賢い> グレーテル

 白い晴れ着は太陽のよう

「りんご組」は <世界で一番美しい> 白雪姫

 黒い髪は夜を吸い込み

「ちしゃ組」は <たかき塔の> ラプンツェル

 小鳥たちが金色の結われた御髪おぐしを花のように広げて待つ


 おとぎ話そのままの姿の、夢に描かれた理想の乙女たちが、危うくも超常なる四王子と手を取り合い、ともに王様の暮らすお城の中へと進んでいきました。

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