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 王子たちと姫に続き、ヤクザたちもまたお城に入り、青みがかった灰色の壁に囲われたエントランスに足を踏み入れました。太陽のお城の中はまるで天国から響いてきているかのような鐘の音が切れ間なく響き続けていて、心の汚れたヤクザたちはその神聖さに耐えられず、黒い服の下で大きな体を小さく強張らせるしかありませんでした。その様子を、まだ幼い姫君たちが高いところにあるバルコニーから見下ろしていて、時々クスクスと笑い合う可愛らしい声が聞こえてきます。男たちは見上げたいという思いを懸命におさえ、行儀よくエントランスで待っていました。ほとんどのヤクザたちは、これ以上お城の中へ入ることは許されていません。お茶会の会場へ入場できるのは、素敵な恋人がいるハンサムな男たちだけなのです。

 王子とそして若頭、補佐、幹部……選ばれた幾人かの男たちはさらにエントランスの先の豪華な階段を上り、謁見の間へと歩みを進めました。姫たちがお茶会を開くときは、みんなでこの街で一番偉い<王様>に挨拶するのが決まりです。

 閉ざされた窓に赤いカーテンがかかった荘厳な謁見の間。その玉座の前に、四人の姫が横一列に立ちました。

 王様はいつもどおり、玉座に腰掛けて娘たちを待っていました。

「ごきげんよう、お父さま」

 最初にグレーテルが、王様にそう挨拶しました。ですが王様は答えません。答えるための口がないのです。

「今日は雨でしたね、お父さま」

 次にシンデレラがそう言いました。ですが王様は答えません。王様には雨音を聴く耳も、湿気を感じる肌もないからです。

「お父さま、今日も私たちはよいお嫁さんになれるよう、男の人に逆らわない、慎ましくしとやかで素敵な女の子でありました」

 白雪姫が、王様のドクロの頭に向けて、そう続けます。

「何もかも、お父さまの願った通り。そうでしょう?」

 結んだのは、ラプンツェル。

 玉座に座る<王様>は、この街で最も偉い男です。その証拠に、切り落とされ膝の上に載せられた髑髏されこうべの頭には、彼の愛した権威の象徴たる金の冠が被せられています。

「それでは、ごきげんよう、私たちのお父さま」

「ごきげんよう」

「ごきげんよう」

「ごきげんよう……クスクス」



 お城で開かれるとはいえ、お茶会はお茶会です。<結婚式>に使われる大きなダンスホールを使うまでもなく、姫たちは比較的小さなパーティルームに集まりました。小さいと言っても、クジラに化けた次男が泳ぐには少し窮屈な程度の、十分に豪華で大きなお部屋です。

 今日は照明が落とされた四角い部屋の真ん中には、同じく四角い小さなテーブルが一つ、上から見てひし形になるように置かれています。四人の姫はテーブルを囲んでそれぞれ、あらかじめ決められていた自分たちの席に座りました。みんなは椅子の上、グレーテルだけは大好きなお兄さんの膝の上に。シンデレラ、白雪姫、ラプンツェルの後ろにはそれぞれの王子が控え、さらに後ろ、部屋の四つ角には選びぬかれたヤクザの幹部たちが組ごとに分かれて息をひそめています。

 息の詰まるような沈黙が、一分ほど。

 やがてコホンと、小さな咳払いが聞こえました。

「……優しき大魔女ホレさまと、恐ろしき大魔女トゥルーデさまの名のもとに」

 ラプンツェルがそう唱えるに合わせて、天井のスポットライトがパッと光を灯して、四人の姫と桃色のマットが敷かれたテーブルを照らしました。

 卓の上には、マニキュアのようにキレイに塗られた小さな"牌"がたくさん並んでいます。

 脇には金や銀で作られた美しい点棒。

 コホンと、今度はグレーテルが咳払い。

「まあ……みんなを呼んだのは私だし」青いサイコロを2つ白い指ではさみながら、グレーテルが静かにそう言いました。「"親"は、私からでいいよね?」

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