第23話-12

 お嫁に行く前にお願いがある。


 そんな風に切り出されてしまったら、応えない幼馴染がいるだろうか。


「なんだ言ってくれ。俺にできることなら、なんだってお前にしてやろう」


「……ありがとうタカちゃん。いつだって、タカちゃんは優しいね」


「言うなみゆき。俺も、俺だって、辛いんだ。だから、最後くらい、お前の願いを聞いてやりたい。かなえて、最後に別れたいんだ」


 偽らざる本心であった。


 みゆきがお嫁に行ってしまったら。

 それをいずれ奪い返すとしても。

 しばらく、彼女と会えなくなるのは間違いない。


 その寂しさを埋めるため、彼女のために俺は何かをしてやりたい。

 俺にできることならば、彼女のために俺は何かをしてやりたい。


「言ってくれ、みゆき……!! 何が、何がして欲しいんだ!!」


 目を伏せて、みゆきが一呼吸置く。

 そして俺から視線を逸らしたままみゆきは――俺に一言。


「タカちゃん。目を、瞑って……」

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