第21話-10

 みゆきが悪辣な顔をしていた。

 いや、実際には少しも悪そうではないのだが、なんというか、精一杯頑張って悪い奴を演じているような、そんな感じの顔をしていた。


 それと同時に、分かったようだねタカちゃんの言葉の意味を俺は察した。

 そして、みゆきが生徒会長になると身の程知らずにも言い出した真意をそこに見出した。


 いや、違う。

 これは俺の見当違い。


 何も決められない女が生徒会長になってはいけない。

 その前提条件が間違っていたのだ。


 なにもできないポンコツが生徒会長になる。だからこそ、周りが支える。

 それこそまさしく――。


「ポンコツ生徒会長と、それを支える優秀な役員たち」


「物語的には、そちらの方が王道」


「なんでもできる生徒会長より、ちょっと抜けている生徒会長の方が、読者だって感情移入がしやすい!!」


 故に、みゆきは胸を張る。

 ないというのに胸を張る。


「私こそ、生徒会長にふさわしい、ポンコツ生徒会長なの!!」


「ぐっ、ぐわぁああああっ!!」


 溢れ出んばかりのみゆきの生徒会長力に、俺は思わずふっとんだ。

 後ろに、車田正美の漫画みたいにふっとんでしまった。


 くそっ、なんて生徒会長力コスモだ!!


「「「ほんとひどい展開!!」」」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る