第20話-13

「いや、すまない。まさか、そんなに驚かれるなんて」


「生まれついてのアイドルだったのか、児島くん!!」


「なんだかパッとしない感じで、本当にアイドルなのって思っていたけれど、生まれついてのアイドルだったんだね、児島くん!!」


「……うん? まぁ、なりたいと思ってなった訳ではないのは本当だ」


 けろりとした顔で言うのが、またなんとも真実味がある。

 こういうのに限って、時代の寵児になったりするから世の中は怖い。


 そうか、気がついたら自然とアイドルになってた系か。


「ふむ。そういう訳なので、どうやってなるかと言われても、普通にオーディションに応募して、頑張ってくれとしか言いようがないんだ。すまない」


 そう言って頭を掻く児島くん。

 なんでもない、そして、親近感の湧くそぶりだけに、その言葉が信じられなかった。


 身近になり、誰でもなれるようになったと思ったアイドル。

 だが、そんなことはなかった。


 やはりトップアイドルになるためには、それなりの素質が必要なのだ。


「アイドルは一日にしてならず、か」


「奥が深い世界だねタカちゃん」


「うん? いや、一日してはならずだが、言うほど苦労した覚えは――」


 それ以上、なるべくしてアイドルになった男の声は、俺とみゆきの耳に入っては来ないのだった。

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