ノゾムとノゾミ。漢字は同じなれど読み方を変えればアラ不思議、女の子の名前っぽくなりました。
第二次性徴期を迎える以前であれば、男子もまだあどけなさが残っているため、女装が意外と似合ったりしちゃうもの。
本作は文化祭のおふざけで女装した結果、あまりにも似合いすぎて「男の娘」として生きざるを得なくなったという(どんな前振りだよ)男子生徒の苦悩を描いた不条理ユーモア小説です。
あろうことか女装中に異国の王子から見初められてしまったがために、女のふりをして暮らさなければならい……という最大規模のぶっ飛び具合がインパクト大です。
普通のコメディ小説ならせいぜい「学園一のイケメン」とか「美形タレント」に惚れられて〜みたいな筋書きで収まりそうですけど、こちとら「異国の王子」ですからね、スケールがいきなりワールドワイドです。
お忍びで滞在していた王子様から公式に求婚され、どうにかして穏便にお断りしたいノゾムく……いやさノゾミちゃん。
機嫌を損ねて国際問題にならないよう、女として接しつつ王子を諦めさせる……という高難易度のミッションに読者はハラハラドキドキの連続です。
そう、読者が見たいのはこの「いかに女のふりをしてごまかすか」「王子のアプローチをどう回避するか」に集約されます。
なので、欲を言えばもっと王子とノゾミちゃんのデートや旅行イベントを増やし、正体がバレないよう四苦八苦するドタバタパートが読みたかったですね。字数的にはまだまだ加筆する余裕があるようなので。
最終的にどうなるのかは筆を控えますが、後腐れのないさわやかな結末を用意している点はとても好印象でした。
S館の児童小説の新人賞に途中まで通過したという実積を持つ本作、大人から子供まで万人にお勧めできる良作です。