17 嵐の告白大会!
急に
え? ゆ、床が
ズゴゴゴゴゴゴ‼ ズガーーーーーーン‼
「どわぁーーーっ‼」
「ひゃぁ~! 助けてぇ~!」
本当に床が崩れた! ボクたちは下の階へと
下を見ると、二階の床も
「う、うわぁ~! まっさかさまだぁ~!」
ボクが悲鳴を上げると、カナちゃんが「二人とも、わたしにつかまってください!」と言い、ボクとタタリ王子の体をつかんだ。女の子なのにすごい
三階から二階、二階から一階へと落下していく中、カナちゃんはボクたちを
「ノゾムく……げふん、げふん! ノゾミちゃん! だいじょうぶですか⁉」
すぐ近くには、二階から落下したらしい
「助けに来たよ!
お姉ちゃんがピースしながらニヤリと笑った。
よかった……。二階から落ちたのに、みんな
「姫乃ちゃん! 俊介! お母さん! お姉ちゃん! ……みんな!」
ボクは涙ぐみながら、みんなのもとにかけよった。とても大事なものが頭からずるりと落ちてしまっていたことも知らずに……。
「え……? か、かつら? おい、ノゾミ! おまえ、その長い
「ほえ?」
タタリ王子のかなり
……ない。ウィッグがない!
「しまった! さっき落下した時にウィッグがぬげちゃったんだ!」
まずい! 男たってばれちゃう!
「おまえ、なんでかつらなんかしていたんだ? 別にショートヘアでもかわいいのに」
……と思ったら、タタリ王子は
そ、そうか! ボクがあまりにもかわいすぎて、ロングヘアのかつらがぬげたていどでは男だと気づかないんだ!
ふぅ~。
「ばれたら
「え⁉ ひ、姫乃ちゃん⁉」
ボクが言いわけを考えていたわずかな時間に、姫乃ちゃんが
「な……なん……だ……と……?」
姫乃ちゃんの
「
「え! そうだったんですか⁉ ど、どうしよ~う!」
俊介に冷静にツッコミを入れられて、姫乃ちゃんは頭をかかえて大声を上げた。横では織目さんが「ヒメヒメは相変わらず、早とちりだなぁ~」と言ってあきれている。
「そんな……ノゾミが男……男……男……」
う、うわぁ~……。タタリ王子、
無理もない、女嫌いの王子が初めて好きになった美少女が実は男だったんだから。ちょっと
「ノゾミちゃんが男だと⁉ おのれ! よくもわたしの息子をだましたなぁ~! 許さんぞ、日本人ども!」
ボクたちがショックを受けているタタリ王子になんと声をかけようかと
国王はどこにいるのだろう。ボクたちがボロボロになった屋敷を見回していると、がれきの山がガラガラと大きな音を立てて
「く、クマーーー⁉ なんでクマがこんなところに!」
どう見ても、クマの中で一番でかいとされているホッキョクグマが子供あつかいされるぐらいでかいじゃん! もしかして、
「気をつけて、ノゾムくん! あの巨大クマとの激しい戦いのせいで、
「服部重蔵さん! 屋敷内でそんな
「め、面目ない。しかし、あのクマはそれがしが刀で切ろうが、ナンバー7どのが
「わたしも必殺のかかと落としをお見舞いしてやろうとしたんだけど、
あと、垂直跳びで二メートル飛べる
「くっ……。世界中のあらゆるクマと戦って勝利してきたオレですら歯が立たないんだ。あのクマはただものじゃないぞ……」
「轟熊太郎さん……。あなた、小学校教師なのに、どうしてそんなにクマ
ダメだ。ななみん親衛隊と姫乃ちゃんが
「フッフッフッ……。
ウシミツドキ国王が
チィスウタロカ山脈……ち、血ぃ
「その名も、チワワ・キュンキュングマだ! 『チワワ・キュンキュン』とは、ウラメシヤ王国の言葉で『おまえはもう、あの世に行っている』という意味だ! どうだ、おそろしいであろう! フハハハハ!」
……チワワがキュンキュン?
「このクマはわたしのペットで、わたしの言うことしか聞かない! わたしの息子をだましたヤツらなど、このチワワ・キュンキュングマのエサにしてやる! さあ行け、チワワ・キュンキュングマ『ニクキュウ』!」
ニクキュウ……
「ノゾム。名前のかわいさに
俊介にそう言われて、ボクはハッとわれに返った。
あ、危なかった。かわいいもの好きの性格のせいで、
「ぐわぁぁぁーーー‼」
ニクキュウはヨダレをだらだらとたらして、その巨体からは想像できないすばやさでボクたちにせまってきた。これは逃げないと本気で殺される!
「み、みんな! 早く逃げ……うわわっ!」
逃げようとしたボクは、小さながれきの石でつまずき、ドテーンとこけてしまった。こ、こんなときにドジっ子
逃げおくれたボクは、ニクキュウにつかまってしまった!
「の、ノゾムくん!」
「ノゾム!」
「ノゾムちゃん! 逃げて!」
「馬鹿クマめ、弟をはなせ!」
姫乃ちゃん、俊介、お母さん、お姉ちゃんがほぼ同時に叫ぶ。
あわわ……。ぼ、ボク、クマに食べられちゃうのかな……。
そりゃないよぉ~! 女の子だと勝手にかんちがいしたタタリ王子やウシミツドキ国王が悪いのに、なんでボクがクマに食い殺されなきゃいけないのさぁ~!
「がるるぅ~!」
「ひ、ひぃぃぃぃ‼」
ニクキュウにすごい力で抱きしめられたボクは、目をつぶって死を
ああ……。せめて、死ぬ前に姫乃ちゃんとデートしたかったなぁ……。食い殺されるって、すごく
ボクはそんなことを考え、ウルウルと
「ぺろぺろ、ぺろぺろ。くぅ~ん……」
「ほ……ほえ?」
なぜか、ニクキュウはかわいらしい
あれ……? もしかして……なつかれている?
「いったい、どういうこと⁉」
水野さんがおどろいてそう言うと、姫乃ちゃんが「わかったわ!」とさけんだ。
「ノゾムくんがかわいいからよ! ケモノでさえ
「もはやなぞの
ミイちゃん先生がポツリとそうつぶやき、水野さんと織目さんがウンウンとうなずいた。
「ば……馬鹿な。凶暴なクマをかわいさだけで
ウシミツドキ国王がわなわなと声をふるわせながらそう言うと、お母さんがウフフとほほ笑んだ。
「その昔、わが国の
「よっ! さすがはオレたちのアイドル・ななみん! 良いことを言うぜ!」
「あの……聖徳太子が言ったのは『和をもって貴しとなせ』なんですが……。それに、クール・ジャパンってそういう意味では……」
ミイちゃん先生が小声でそうツッコミを入れていたけど、だれも聞いてはいなかった。
「ウシミツドキ国王。あなたがたを守っていた
「ふ、フン……。男だと知っていたら、この少年を
ウシミツドキ国王はカンカンに怒っている。でも、おおぜいのななみん親衛隊に
「さあ帰ろう、タタリ王子! ……そういえば、
「オレは……帰らない。まだ、日本にいる!」
「王子。おまえも母さんを探し……え? 帰らないだと⁉ な、なぜだ!」
ウシミツドキ国王はタタリ王子の言葉におどろき、目を丸めた。ボクたちも「え……?」とつぶやきながら、タタリ王子を見つめる。
「おまえの
「嫌だ! オレはそれでも……男でもノゾミが好きだ! 男が、かわいい男の子を好きになって、なにが悪い!」
「は? ……はぁぁぁぁ⁉」
ウシミツドキ国王はおどろきのあまり、危うくひっくり返りそうになった。
ボクも、ひっくり返りそうだ。
「お……おい。王子よ、気はだいじょうぶか? しっかりしろ! 相手は男……」
「男がかわいい男の子を好きになっても、なにも悪くはありませんよ」
「お、王妃⁉」
いつの間にかウシミツドキ国王のうしろにいたクチサケ王妃は、
「
すごくいいことを言っている……と思ったら、相変わらず
「は……母上! ありがとう! オレ、がんばるよ!」
いや……いやいやいやいやいや!
おたがいに好き合っているのなら、男と女だろーが、男と男、女と女、なんでもありだとボクも思うよ?
でも、ボクが好きなのは……。
「ごめんなさい! ボク、姫乃ちゃんのことが好きなんです!」
ボクはせいいっぱい声を張り上げ、カミングアウトした。
もう
「の……ノゾムくん……」
姫乃ちゃんは
「待て! オレもノゾムのことが好きだぞ! ノゾムにとって女の子の中で一番の
「えっ、ちょっと、俊介くん。わたしがノゾムくんの告白に
「タタリ王子になんて負けてたまるか! ノゾムの一番はオレだ!」
いつもは冷静な俊介が、
俊介、ちょっとだけ空気読んで? 今、姫乃ちゃんがものすごーく
「ノゾムくん×ヒメヒメは王道だけど、ノゾミちゃん×俊介くんもやっぱりいいわぁ~」
「うん! うん! とっても絵になるよね! 見つめ合っている二人の
ほらぁ~! 織目さんと水野さんがまた
「……この
「な、なにぃ~⁉ か、カナ・シバリ! おまえ、女だったのか!」
「はい! そして、ずっと昔からあなたのことが好きでした!」
「な、なななななななにぃぃぃーーーっ⁉」
もう、何もかもがカオスだった。
だ、だれかこのカオスな告白大会を止めて……。
「ウフフ。人間は愛に
お母さんは楽しそうに告白大会の様子を見物している。
「いや……。みんな、少しは落ち着いて相手の話を聞いたほうがいいんじゃ……」とお姉ちゃんがつぶやいていたけど、激しく
かくして、ぐだぐだのうちに「ノゾミちゃん救出作戦」は終了するのだった……。
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