16 突入!
ウラメシヤ王国の兵士たちが
「ウシミツドキ国王様ぁ~♪ タタリ王子様ぁ~♪ あたしの大事な子供を返してくださぁ~い♪」
お母さんののほほんとした声が、
うわっ、すごくうるさい!
「……ノゾム様。あそこにいるのは、ノゾム様のお母様ではありませんか?」
カナちゃんが指差した向こう――屋敷の
彼らはキラキラと
ざっと見たところ、この窓から見える
そのなぞの
なんというか、その……あの……ちょっとは
いや、かわいいけどさ⁉
「ななみん! ななみん! ななみーーーん‼」
「ななみん
「いいともーーーっ‼」
「ななみんとわれら
……でも、ボクはあなたたちの息子になったおぼえはないんですけど。ていうか、ボクには何万人の親がいるのさ……。
「もしかして、この人たち全員がノゾム様のお母様の元ファンなのでしょうか」
「……みたいだね。元ファンというよりは、今でも現役バリバリの
「ひょっとして、ノゾム様のお母様が本気になったら、日本国を
カナちゃんが声をふるわせながらそう言った。
い、いや、さすがにそれはおおげさなのでは? ……たぶん。
「タタリ王子! おとなしくノゾミちゃんを返しやがれ! ……げふん、げふん、ノゾミちゃんを返してください! さもないと、ななみん親衛隊M県支部のみなさん八万人があなたたちをやっつけちゃいますよ!」
今度は
は……八万人⁉ しかも、M県支部だけで? ……ということは、日本全国だと何百万人になるんだろう……。
本当に、お母さんが本気になったら日本を
ボクとカナちゃんがあきれている間にも、ななみん親衛隊八万人とウラメシヤ王国の
「どれだけ数でおそうとしても、しょせんは
「オレたちをただのアイドルファンだと思うなよ! オレたちはスーパーウルトラ
「いいわよーん♪ じゃあ、熊太郎くんが好きな『くまった、くまった、クマの恋人』を歌うね♪」
♪くまった! くまった! どうしよぉ~!
わたしが恋したのは とっても大きなヒグマさん♡
泳ぎが上手でわたしが住む島まで泳いで来ちゃった!
「ボクは肉が好き あなたを食べちゃいたいほど愛してる」
「お腹が空いた あなたを食べちゃいたいほど愛してる」
くまった! くまった! どうしよぉ~!
「
ウラメシヤ王国の
戦っている
「ウラメシヤ王国の兵隊たちがななみんの歌に聞きほれている
「おおーーーっ‼」
ななみん親衛隊のリーダー格である
アイドルオタクたちサイリウムを
「な……なんだ、この
「
一期一萌という
さすがは
「一期一萌……まるでわけがわからない! やはり日本人はHENTAIだ!
「自分たちが理解できないからといって『おかしなヤツらだ』と決めつけるのは、
ナンバー
「うぎゃー! 日本はおそろしい国だー! た、助けてくれぇー!」
お母さんの変てこな歌とななみん親衛隊のサイリウム
「おまえたち、逃げるな! 絶対に屋敷の中にななみん親衛隊を入れてはならん! 国王一家とノゾミさまをお守りするのだ!」
隊長らしきおじさんがそう怒鳴っているけれど、ウラメシヤ王国の警備部隊の士気はもうボロボロだった。
戦いが始まって三十分もしないうちに、警備部隊の
突入したななみん親衛隊三十数人の中には、姫乃ちゃんや
「みなさん、ノゾム様のためにここまで
「……いや、クール・ジャパンとはちょっとちがうような……」
姫乃ちゃんたちの友情に感動したカナちゃんが目をうるませている横で、ボクは
「うぎゃぁ! しゅ……
「スナイパーだ! 敵には
「なんだ、あのクマみたいな大男は! とんでもない怪力だ! ぎ、ぎゃーーーっ‼」
下の階からそんな
どうやら、ななみん親衛隊の中心メンバーである服部重蔵さん、ナンバー7さん、轟熊太郎さんたちが
たぶん、みんながボクのところまでたどり着くのは時間の問題だろう。
そんな時である。タタリ王子が急に部屋に入って来たのは。
「くそっ! ここはもうダメだ! ノゾミ、ここから
タタリ王子は部屋に入って来るなりそう
「い、痛い! 手をはなして!」
「悪いが、そんなことを言っている場合じゃないんだ。
「嫌だよ。ボクはみんなと帰る。逃げたかったら、自分だけが逃げれば?」
「なにを言っている。おまえはオレの
「そんなの、タタリ王子が勝手に決めたことじゃん! わたしの
「今はそんな話をしている場合じゃない。おまえの話も、あとでちゃんと聞くから……」
「嫌だ! 今この場で、タタリ王子の気持ちを聞かせてよ! タタリ王子は、どうしてわたしのことを好きになったの⁉」
「えっ? そ、それは……」
タタリ王子は顔をわずかに赤らめて、ボクを見つめた。カナちゃんも
ボクがこんなことを聞いたのには、理由が二つある。
まず一つ目の理由は、姫乃ちゃんたちがこの部屋までやって来るまでの時間
そして、二つ目の理由は、タタリ王子がどんな女の子がタイプなのかをカナちゃんが知るためだ。ボクのどんなところにほれたか王子が答えたら、カナちゃんが女の子として王子にアタックする時のヒントになるかも知れない。そう思ったからだ。
「今までまわりの女たちは、オレの妃候補になろうとして、王子であるオレに
タタリ王子はボクから顔をそむけながら、たどたどしい口調でそう
う、うう……。いくら相手が男とはいえ、そんな
……あれ? でも、ちょっと待てよ?
「姫乃ちゃんもタタリ王子に真っ向からさからっていたけど、姫乃ちゃんはタイプじゃないの? 姫乃ちゃんもすごくかわいいのに……」
「あいつは
「…………」
なにも言い返せなかった……。ぼ、ボクは姫乃ちゃんのこと大好きだよ⁉
「も、もういいだろう⁉ ほら、早く逃げるぞ!」
タタリ王子は耳まで真っ赤になって、やけくそぎみにそう言ってボクを引っ張った。
その直後、とんでもないことが起きた。
ズゴ……ズゴゴ……ズゴゴゴゴゴーーーっ‼
「う、うわ⁉ なんだ⁉ 地震か⁉」
「わ、わ、わ! なになに⁉ なにが起こるんです⁉」
「お二人とも、お気をつけください!
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