9 親子二代にわたってファンです
「お母さん、いったいだれを呼んだの?」
「んー? お母さんのぉ、
「し、親衛隊⁉ なんで、一国の女王でもないのに、
ボクがおどろくと、お姉ちゃんが「馬鹿ねぇ~、ちがうわよ」と言いながら笑った。
「お母さんがアイドルをやっていたころのファンのことでしょ」
「ああ、なるほど……」
でも、アイドルの追っかけをやっていた一般人たちに、ウラメシヤ王国の
「おい! 貴様ら、何者だ! ここはウラメシヤ王国の
お母さんが親衛隊のリーダー格(?)の人に電話をしてから五分ほどたったころ、急に外がさわがしくなった。
「な、なにごと?」
おどろいたボクとお姉ちゃん、
門の前では、まちまちなかっこうをした中年男性たち四人が、ウラメシヤ王国の
ウラメシヤ王国の警備員みたいに黒ずくめの服を着ているおじさんは、つばの広い
その横にいるおじさんは、なぜか忍び
そして、一番
……どこからツッコミを入れたらいいのか、まったくわからない。
「ねえ、ねえ。あの人たちがお母さんのしんえーたい? 細長い
「いや、あれってスナイパーライフルじゃない? 映画で見たことあるもん」
葉月とお姉ちゃんの会話を聞き、自分の目でも
「ライフルを持った人がアイドルの元ファンなわけないって! き、危険人物だ! 早く警察に
「警察を呼んでも、ウラメシヤ王国の警備部隊の人たちに追いはらわれるだけじゃない? それに、ほら。警備の人たちがライフルを持った人とその仲間たちを
「そ、そっか。あー、よかった。あの警備の人たちがまさか役に立つなんて……」
お姉ちゃんの言葉でホッしたのもつかの間、今度はお母さんがとんでもないことを言いだした。
「あの人たちが、お母さんの親衛隊だよ?」
「え⁉ ええええええ~⁉ お母さんのファンって、ああいう人たちばっかだったの?」
「親衛隊のほとんどはふつうの人たちよ。でも、お母さんのファンは世界中にたくさんいてね。中には個性的な人たちもいたの。それが、あの人たちで――」
などとお母さんが言っている間にも、家の外ではとんでもないことが起きていた。
「ぐ、ぐえぇぇ! こいつら、めちゃくちゃ強いぞ⁉」
「ごふっ! がはぁ!」
「これはかなわん!
信じられないことに、お母さんの元ファンのおじさんたちは、おおぜいの大男たちを数分でたたきのめしていたのである。
「わー! あのおじさんたち、つよーい!」
「えっへん! お母さんのお友達はすごいでしょ?」
お母さんは
う、うそーん。あんなの、アイドルの追っかけをやっていた人たちの強さじゃないってば。
……もしかして、ボクのお母さんって、ウラメシヤ王国の人たち
お母さんは、ウラメシヤ王国の警備員たちを
「ノゾミちゃん! 無事でしたか⁉」
「ひ、
「あっ、こ……これは……えへへ」
舌をペロリと出して
「この子が
お母さんがウフフとほほ笑み、ださいポロシャツを着たリーダー格(?)のおじさんに言った。
「はい。
周作さんは、デヘヘと鼻の下をのばしながら、お母さんに頭を下げた。
えっ……? もしかして、このおじさんが姫路さんのお父さん⁉ ま、まさか、クラスメイトの父親がボクの母親のファンだったなんて……。これはかなりのおどろきだよ。
それにしても、お母さんとお話している周作さんは、ものすごくうれしそうだ。親衛隊のメンバーになるぐらいなのだから、アイドル時代のお母さんの
「こんなにもかわいいのなら、姫乃ちゃんもアイドルになれるんじゃない?」
「あははははは! まっさかぁー! こいつ、小動物みたいな見た目に反してゴリラなみの
「ノゾミちゃんの前でなに言ってやがる、このクソ親父ぃぃぃ‼」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ⁉」
鬼の
「あ……あぶねぇなぁ! そういうところがゴリラなんだよぉ~! ノゾムくんの前でそんな
「あっ……。し、しまった。またやっちゃった……」
姫路さんはバットをほうり投げると、顔を真っ赤にしてボクを見つめ、もじもじと体をくねらせた。その
「の……ノゾミちゃん。あの……。わたしのこと、嫌いになりましたか?」
姫路さんはウルウルと
「……いや、少し前からなんとなく気づいてたよ。姫路さんの
「う、うええ……。女の子っぽくなりたくて、なるべく男子とは話さないようにしていたのにぃ……」
ああ、なるほど。姫路さんが男子をさけていたのは、男と
「わたしが小さい時にお母さんが亡くなったから、わたしの家の家族
そういえば、メイド
……でも、そんな姫路さんの本性を知って、ボクが
姫路さんは、そんなボクのことを「宮妻ノゾミちゃん、ぜんぜんアリです!」と言って
「姫路さんは、姫路さんじゃないか。
と、ほほ笑みながら言っていた。
その直後に、「これって、ハッキリとは言わなかったけど、半分ぐらい告白なんじゃ……?」と気づいてしまった。でも、口にしてしまった言葉はもう引っこめることはできない。
わ、わ、わ……。ちょっと
姫路さんは感動しているのか、だばだばと涙を流している。
……まあ、いいか。喜んでくれているみたいだし。
「わ……わたし、お父さんがノゾミちゃんのお母さんのファンだったように、ノゾミちゃん……ううん、ノゾムくんにあこがれていました! 男の子なのにとってもかわいいノゾムくんと仲良くなりたいって、ずっと思っていたんです! ……わ、わたしと仲良くしてくれますか?」
姫路さんは意を決したように、ボクをまっすぐと見つめ、そう言ってくれた。
「う、うん……。こちらこそ、よろしく。ええと……
ボクがちょっと
ボクたちは、それぞれの家族と親衛隊のみんながニヤニヤと笑いながらボクたちを見ていることに、まったく気づいていなかったのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます