5 ランチタイム三角関係
タタリ王子は、
「な、なんて
「ご……ごめんなさい……」
「タタリ王子、許してあげてよ。姫路さんは、ぼ……わたしを守ろうとしてくれたんだ」
「守るだと? オレにキスされるのが、そんなに
「嫌です(キッパリ)」
「ぐっ……うう……」
あまりにもハッキリとボクに
わざわざボクのために日本の学校に
でも、タタリ王子は、冷たくされたぐらいではあきらめない、かなり
「ノゾミ。いっしょに昼ご飯を食べよう」
昼休みになると、
「いっしょに食べようって言っても……お弁当はどうしたの?」
タタリ王子が手になにも持っていないのを見て、ボクは首をかしげた。
タタリ王子は「アハハハ」と高笑いし、こう言った。
「弁当だって? オレが
パチン、とタタリ王子は指を
シュバババババババ‼
黒のスーツを着た
「ご
タタリ王子が執事のリーダー格らしい美少年にそう声をかけると、カナ・シバリと呼ばれた美少年執事は「ははっ」とうやうやしく頭を下げた。
カナ・シバリ……
「ウラメシヤ王国の
「君の国の人間や動物って、なんでそんなにこわい名前ばかりなの⁉」
ウラメシヤ牛、ウラメシヤ海老、ウラメシヤ鳥……。なんか食べたら呪われそうなんですけど。あと、牛や海老の見た目は日本にいるのとあまり変わらないのだろうけど、ウラメシヤ鳥ってどんな見た目の鳥なのさ。
「ウラメシヤという言葉はおまえの国では他人を
「じ……じゃあ、君の『タタリ』という名前にはどんな意味があるの?」
「『タタリ』は、『
クチサケ・ウラメシヤ王妃……く、
「あの……ちなみに、そちらのカナ・シバリさんは……?」
「ボクのファミリーネーム『シバリ』は、『
「じゃあ、ファーストネームの『カナ』は?」
「『愛のために生きる』、です」
「へ~。ロマンチックな名前なんですね」
ボクがそう言うと、カナ・シバリさんはちょっと
「おい、ノゾミ。オレには冷たいのに、オレの
タタリ王子は、ムッとした表情でボクをにらんだ。
いや、男にそんなふうに
「もうしわけありません、王子……。ボクたちはこれで失礼いたします」
空気を読んだカナ・シバリさんたち執事は、
カナ・シバリさん、
「さあ、好きなだけ食べろ」
「ええと……。ぼく……わ、わたしは、お母さんが作ってくれた弁当があるから、タタリ王子がみんな食べなよ」
「庶民が王族の料理を食べられる
「遠慮をしているわけじゃなくて、お母さんの弁当を食べたらいつもお腹いっぱいになるし……」
「なるほど、おまえは小食なのか。そういうところも女の子らしくてかわいいな。だったら、オレがおまえの弁当を食ってやろう。だから、おまえはウラメシヤ王国の料理を食べろ」
「ついさっき、庶民の粗末な料理は食べないって言ってたじゃん! なんで、そこまでしてわたしにウラメシヤ王国の料理を食べさせたいの⁉」
「おまえはオレと結婚して、ウラメシヤ王国の人間になるんだ。ウラメシヤ王国の料理が口に合わなかったら苦労するから、いまのうちにわが国の料理に
「そんな気づかい、
「わからず屋め……。こうなったら、口につっこんで食べさせてやる!」
タタリ王子はそう言うと、ウラメシヤ鳥のから揚げを指でつまみ、ボクの口に
「きゃー! きゃー! やめてよーーーっ!」
見た目はふつうのニワトリのから揚げっぽいけど、ウラメシヤ鳥という正体不明の生き物のから揚げなんて食べたくない。ボクは全力で拒否しようとした。でも、女子よりも
「おい。ノゾミが
ピンチのボクを助けてくれたのは、
俊介のうしろには、姫路さんもいる。フー、フー、フー……とケモノのようにうなり、タタリ王子にいまにも飛びかかりそうな
……姫路さんって、見た目はお姫様みたいだけど、かなり
「……なんだ、おまえ。オレの未来の嫁とはどういう関係だ」
タタリ王子が、俊介をギロリとにらむ。俊介もにらみ返し、二人の間でバチバチと
「こいつは……オレにとって一番大事な
「な、なんだと……?」
お、おいおい、俊介! こんな
「
ほらぁーーーっ‼ どうすんのさ、もーう‼
タタリ王子の顔は、見る見るうちに
「おもしろい。オレとおまえのどちらがノゾミにふさわしいか、勝負だ!」
そう
俊介も「いいだろう」と言いながら
な、なぜこんなことに……!
「あ、あわわ! 二人ともケンカはしちゃダメだよ! い……いくら王子様でも、クラス
クラス委員長の
「男と男の
「わ、わ、わ。ごめんなさい。……でも、
「む……。そ、そうなのか……?」
水野さんに
「仕方ない。おい、庶民。ここはノゾミに
「フン……。無理やり自分のモノにしようとしても、女をほれさせることはできないぜ」
タタリ王子と俊介がにらみあいながらそう言い合っていると、教室の女子たちが「きゃー! ノゾミちゃんをめぐる三角関係ができちゃったわ! 少女マンガみたーい!」などと黄色い声でさわぎはじめた。
……あの、みなさん。ボクを女の子だと
制服とかメイド服とかかわいい服を着るのはまんざらじゃないけど、男であるという
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます