4 転校生は王子様!
ボクは、朝のホームルームが始まるぎりぎりに教室に戻った。言うまでもなく、わが校
うちの学校の女子の制服は、
……でも、クラスのみんなはどう思うだろう?
いくら「かわいさ
「あっ、
ボクが教室に入ると、ミイちゃん先生がそう言い、「……だいじょうぶだった?」と心配そうにボクにたずねた。もう、教室ではボクは女子あつかいなのね。
「かわいくなれるのは好き……げふん、げふん、
ボクは不安な気持ちをいっぱいにして、教室を見まわした。
みんな、女装しているボクを笑ったり、
ガタン! と、一人の少女が席から立ち上がった。
「と……とってもかわいいと思います! これ、アリです! 宮妻ノゾミちゃん、ぜんぜんアリです! むしろ、こんなにもかわいい顔をしているのに、女装しないのはもったいないぐらいです! 『かわいい子には女装させよ』ということわざもあるじゃないですか! ていうか、
いつもおとなしくてひかえめな姫路さんが、
「『かわいい子には女装させよ』……。そんなことわざがあったなんて、知らなかったよ。姫路さん、教えてくれてありがとう!」
「いや、そんなことわざはないからな」
「……でも、姫路の言う通りだ。男のかっこうをしていようが、女のかっこうをしていようが関係ない。おまえはおまえじゃないか。見た目が女になっても、オレはおまえの親友だから安心しろ」
「ありがとう、俊介……」
親友の心強い言葉に、ボクは涙が出そうになった。
ボクをはげましてくれたのは、姫路さんと俊介だけじゃない。
「まあ、元はと言えば、わたしがノゾムく……じゃなかった、ノゾミちゃんにメイドのかっこうをさせたのがすべての
「わ、わたしもクラス委員長としてノゾミちゃんを助けたいと思うから、
「二人とも、ありがとう!」
意外なことに、他のみんなも
クラスメイトたちの美しい友情を目の当たりにして、ミイちゃん先生は「う、う、う……。わたしの教え子たちはみんないい子だよぉ~……」と言いながら鼻水をたらして泣いている。
「教室に美少女が一人増えるんだから、なにも
「ああ! ノゾミちゃんと姫路さんがツートップとして、水野委員長と織目さんもかわいいし、一年C組は美少女ぞろいだぜ!」
「美少女にかこまれて、オレたちは勝ち組だな。この
……男子の中には、おかしな方向でノゾミちゃんを
ま、まあ、イジメられたりするよりはマシか。逆に、男のかっこうにもどった時にすごくガッカリされそうだけど、その時はその時だ。
ノゾミちゃん
教室の戸がガラガラ! と
パンパカパーン、パンパカパーン、パンパカパッパ パンパカパーン~♪
ズダダダダダダダダダダダダダダ!
ジャーーーン! ジャーーーン! ジャーーーン!
トランペットやドラム、シンバルのけたたましい音が
二人は、ボクたちがぼうぜんと見守る中、赤いじゅうたんを廊下から教室の中へとくるくると
そして、その赤いじゅうたんの上を
「うげげぇー! で、出た、わがまま王子ぃー‼」
「タタリ王子様! わたしが呼びに行くまで
ミイちゃん先生があわてた声でそう言う。
そうだ! そうだ! いくら王子様でも、学校でのマナーは守らなきゃダメなんだぞ!
「フン。なぜ、王子であるオレが
タタリ王子は、キラキラと黄金に輝く前髪をかきわけながら、背の小さいミイちゃん先生を見下して言った。う、うわぁ~、相変わらず
ミイちゃん先生! 大人として、もとしっかり
「むぅー! むぅー! わたしはこの教室の
ミイちゃん先生は、ほっぺたを
「ダメだよ、先生を泣かせたら!」
見ていられなくなったボクが
「宮妻ノゾミ――オレの未来の
「ぼ……わ、わたしは会いたくなかったんですけど」
や、やばい、またキスされた時のことを思い出して
悪いけど、ボクはかわいいものが大好きなんだ! いくら
「相変わらず、
タタリ王子はそうささやきながら、ボクのあごを指でクイッと持ち上げ……。
あっ、まずい! これは前と同じパターンだ!
「い……嫌! やめて!」
ボクは体をくねらせ、本当の女の子みたいなかよわい声を出してそうさけんだ。
その直後――。
「させるかぁぁぁぁぁぁーーー‼」
姫路さんが光の速さで走って来て、タタリ王子を両手で突き飛ばした。
「う、うわぁぁぁーーー⁉」
タタリ王子は悲鳴を上げながら、
「ぎゃぁぁぁ! が、外国の王子がぁぁぁ!」
ミイちゃん先生が顔を真っ青にして、
「ここ……三階だったよね……?」
水野さんがポツリと言った。
……
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