転移者と修行の始まり
「見えるも何も、さっきから後ろの方でちょろちょろしてましたけど」
俺がそう言うと、小さな女の子はびっくりしたようで奥の部屋にいってしまった。
「まさかあなたたちも、リオナを見ることができるなんて。しかも二人とも。」
「その、リオナちゃんを見ることができるとは、どういうことなんですか?」
「実はあの子は精霊なのよ、それも精霊の中でも高位の存在で、普通の人には見ることすらできないの」
精霊か、だからふわふわしたオーラ的なものが覆っていたのか…
……なんか扉の隙間からこっちをチラチラ見てきてるし。可愛いな
「なるほどね、そうだったの。ところで私は、もう一つ気になってたんだけど、
雪十、何でさっきからずっと敬語なのよ、キャラ作るのやめなさいよ。」
「ん?ばれた?いや、でもまぁ目上の人に敬語使うのは当たり前だろ?」
「確かにそうだけど、いつもぐーたらなのに、なぜか、こういう時は真面目になるから、ちょっと変な感じがしたのよ。」
そんなに変だったかな?俺の真面目な姿って。
「…そういえばリオナちゃんの話でそれましたけど、そもそも俺たちはどうやって元いた世界に帰ればいいんですか?」
いろいろ気になることが多すぎて大事な事を忘れていた。
「それは私にも分からないわ、過去の記録を見ても元の世界に戻った祝福者はいないそうよ」
ロイカさんは古めかしい本を開きながら言った。
「マジですか…」
「それじゃあ、私たちはこのまま帰れないの!?」
「いえ、古い伝説によると帰る方法があるらしいわ。「世界に関わる災いを討ち払えば故郷の地に帰する」と、この古文書には書いているわ」
その古文書なんでも書いてあるな〜。まるでゲームのヘルプのようだ。
「災いってことは、恐らく、魔王のことを言ってるのだと思うわ」
魔王いるのか。
「魔王ですか、それは一体どんなものなんですか?」
「それがわからないのよね。ある時は獣であったり、またある時は人であったりするから、魔王の本当の姿や、どんな生物なのか、もしくは生物でもないのか誰も知らないのよ。わかっていることは、この世界の災いの源と言われていることだけね」
「そうですか、その魔王を倒すまで、私たちは当分この世界にいなければいけないのね......」
「確かにそうなるな。まぁ、俺としては、ダラダラできるからいいんだがな〜」
「あんたはいつもそうやってお気楽なんだから、少しは緊張感を持ちなさいよ!」
「冗談だよ......」
「……真白ちゃん、随分落ち着いてるわね。」
「そうですか?まぁ、雪十に振り回されるのは慣れていますから。でも、今回はそんな落ち着いてもいられませんよ」
うむ、いつも振り回してるのはそうなんだが、今回の件は俺のせいじゃないぞ?
「さてと、こんな事を話してても何も始まらないわ。それじゃあ、そろそろ始めるとしますか!」
ロイカさんが気合を入れて言う。
「ん?始めるって、何をです?」
「ふふん、もちろん決まってるでしょ♪魔王討伐のための特訓よ!」
その一言からロイカさんの猛烈な特訓、否。修行が始まるのであった。
って何で俺はナレーションみたいなことしてるんだ?
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