〜賢者と精霊〜その1

 木造の家には、不思議な光を放つ液体を作る ロイカと、それを手伝っていた小さな少女リオナがいた。


 水の沸騰する音がたち。蒸気が


「ふぅ、リオナ、水をとってくれる?」


「はい!…どうぞ!」


「ありがとう......っぷはぁー」


「よし!あともう一息、頑張るわよ!」


「はい!頑張りましょう!」


二人は汗を拭い、光る液体をフラスコのような瓶から、装飾の豪華な瓶へと移し替えていた。


「リオナ、仕上げをお願い」


「はい!」


リオナが元気よく返事をすると、リオナの背中から羽が生え、

光る液体を入れた瓶に手を翳し、呪文を唱え始めた。


「ロウニフェインスフリウスレイクロイドメニクレイト」


呪文を唱え終わると、リオナの背中から羽が伸び、羽の周りを漂う光が、瓶を包み込み、瓶へと吸収された。すると、リオナの背中から伸びていた羽は収縮し、羽はなくなっていった。


「終わりました!今回も賢者の涙の出来は素晴らしいです!」


「ありがとう。リオナ。でも、賢者の涙を作れるのはリオナのおかげよ」


ロイカはおもむろにリオナの頭を撫でる。


「ふふ」


リオナはロイカに撫でられ、顔が緩む。


妖精であるリオナは普段、人からは見えない、しかし、見る事ができるものが稀にいる。

その一人だったのがロイカである、そしてこの二人が出会ったのはほんの少し昔の事だった。




ー7年前ー


「あーー!全然進まない。もう!どうして、刻印がこの紋章に反応するのよ!反応を抑えるなんて抵抗力が

乗算され続ける魔力紋章を持った精霊でもいないと!…精霊でなくても良いのだけど、そっちの方が確率が高いのよね〜、うーん。………とりあえず街に行って、気分転換しようかしら、

ハルの実のケーキでも食べに行こっと♪」


街へ行くには家を囲む森を抜けなくてはいけないといけない。


「こういう時は身体強化で一気に駆け抜けましょうね〜」


そう言うとロイカは魔力を全身に纏い、足の力を込めた。


「はっ!」


地面が凹み次の瞬間、ロイカの姿が消え、突風が巻き起こる。

ロイカが森を進む中彼女の前に影が現れる。


「くっ、ハァッ」


その影を避けるべく、ロイカは地面に足を着き右に進行方向を変え、一気にスピードを殺した。


「ふぅ、危なかったわね一体なんだったのかしら」


ロイカは先ほどの影の正体を確認しに行った。そこにつくと、一人の少女が横たわっていた。


お、女の子?こんな森深くまでどうやってきたのかしら?それにひどく衰弱してる。

でも服はボロボロじゃないわね。いったいどうしたのかしら。


「ハァ、ハァ、ハァ」


「大丈夫?」


……返事がないわね。熱があるみたいね。どれくらいあるのかしら……私はこの子のおでこに手を当てた。


「アツッ、何よこれ!?どれだけ熱があるのよ!?と、とりあえず冷やさないと!」


氷を形成してっと。どこかに手ぬぐいか何かないかしら。持ってきたカバンの中を探る。

これで、氷を…よし!衣嚢にあった重さ半減風呂敷で、キュッっと固定する。


「待っててねすぐにうちに連れて行ってあげるから!」


「…え、るの?……」


女の子が何かつぶやくけど聞き取れない。でも今は早く熱を下げないと!


「喋っちゃだめよ!すぐに助けてあげるから!」


女の子を背中に担ぐ。あの速度で走ったら危険よね、そしたら転移魔法を使うしかないわね、めんどくさいとか言っていられないわ。だって、この子の命は私にかかってるんだもの!

家の中の風景を思い浮かべ、膨大な魔力を集めた。その次の瞬間景色が変わる。


「さぁ、ベットに横になって。今、飲み物をもてくるからね」


あと、回復ポーションと、ブレムの実を持ってこないと。


「ハァ、ハァ、ハァ」


「大丈夫よ、これを飲んで、安静にしてればすぐよくなるわ」


私は、女の子を少し起き上がらせて、水とポーションを飲ませてあげる。


「…ちか…で…い…ま……く」


「おかしいわね、これは私が作った中でも最高の出来なのに。本当ならもう普通に喋ることはできる筈よ」


「……ま……り……く」


「体力が回復したなら、他に何か原因があるのかしら。この子がさっきから呟いてる言葉も気になるし。

でも、さっきよりは顔色はよくなっているわね。もしかしたら」


「…ま…り……く……」


「私の読みが正しかったら、これで良くなる筈」


この子が行ってる言葉はおそらく魔力、体力を回復しても治らないのならそれは魔力や精神的なものに原因があると言って良いでしょう、症状も大半が魔力欠乏症と一致するわ。それならこの魔力回復ポーションで良くなる筈よ。


「んく、んく、んく…ごくごくごくごく」


「随分とすごい勢いね。その飲みっぷりじゃ、もう心配ないみたいね。でも、しばらく安静にしてなきゃダメよ」


「はい…大変ありがとうございました。運よくあの場に貴女様が来て頂けなければ。私は死んでしまっていたでしょう。普通、人は精霊を見ることができないので、他の精霊ぐらいしか助けてもらえるあてはなかったのですが、今日は精霊集会なので、神聖樹の森の外に出る精霊は少ないのです。本当にありがとうございました。それにあんなに純度の良い魔力をいただいてしまい、何かお礼はできませんでしょうか?」


「お礼なんて良いわよ、それにしても今日は精霊が極端に少ないと思ったけど、そんなことがあったのね。

ところで何であんなところに?しかも精霊だったなんて、霊光や魔力が薄くて気がつかなかったわ」


「あの森にいた理由ですか?…少し恥ずかしい話ですが、隠すような事ではありませんので、

最初から全てお話します。あれは、昨日の夜のことでした」

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