リンナ・ドロッキー

「ねぇ、ドロワ、チューしよ」

「んっ、何いってんのリンナ」

「だって、したくなったんだもん」


 リンナは目の前の動物のアンティークを模写しているドロワに後ろから抱きつき、不意にそんなことを言い出した。

両腕が首にかかり、ゆさゆさ揺らす。

このままじゃ右手に持っている筆と左手に持ってる絵の具パレットで汚れるのを防ぐため、ドロワはサイトテーブルにそれぞれを置いた。


「お絵かきは今日はこれでオシマイ。あとはアタシと遊ぶの!」

リンナは自分の顔をドロワの顔に近づけた。

「リンナ、ちょっと」

右頬と左頬がくっつく。


「チューするぞ、遊ぶぞー」

まるで小さい子供のようにはしゃぐ彼女からシャンプーの甘い香りがした。

ドロワは少しドキッとした。

ゆすりは続く。


壁掛け時計に目をやると絵を描いてから2時間ほど経っていた。

自分としてはもっと集中して作業したかったがしょうがない。


「わかった、わかった。リンナさんと遊ぶ、遊びましょう」

ドロワは「はぁっ」と一つ溜息をつき観念する。


「やったあ、じゃあね、じゃあね」

目をキンキラと輝かせたリンナはあまりの嬉しさにドロワから両腕を離し、

飛び跳ねた。そして天に両手を目いっぱい挙げた。


でもその前にやることはやらないといけない。

模写に使ったこの部屋、道具達を片付けること。


「じゃあ、遊びに行く前にこの部屋片付けるから、リンナも手伝って!」

「へっ?!」


急なフリにリンナはきょとんと目を丸めた。

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書き止め用小話 相田秀介 @nanado

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