ポータルズ ー最弱魔法を育てようーの評価
評価開始から二日目に突入しました。
空知音さん作「ポータルズ ー最弱魔法を育てようー」の評価をしていきます。
本作は幼馴染みや親友と四人で異世界に行き、自分だけ(能力的に)ハブられちゃった系なストーリーです。
結果的に一人別行動するパターンですね。王道と言えば王道です。
一人殺されかけて――だと有名な作品に「ありふれた職業で世界最強」がありますし、巻き込まれたという内容では「金色の文字使い」がありますね。
この作品では主人公の一人称視点で書かれています。
個人的な見解ですが、一人称視点の良さはそれぞれのキャラクターの本音を描ける点にあると思います。
恋愛アドベンチャーゲームに置いてシリアスな内容が面白いのは、そもそも恋愛アドベンチャーゲームが一人称視点で書かれるものであり、主人公のあるいは視点変更によって攻略ヒロイン自身の本音を描くからこそです。
これも私が好きなだけなのですが、その面白さを理解するならば三角関係モノ(オススメは「Memories Off 2nd」「WHITE ALBUM」)をやってみるといいかと思います。
面白い作品というのは、どこかしらに共感出来る要素があるものです。
もっとも主流な要素が「感情」や「妙なリアルさ」です。
「感情」や「妙なリアルさ」が何故、優秀かと言うと、魔法や異世界転移、転生などなどの非日常要素と絶対に“共生”出来る要素だからです。
私の知る中でオススメする「妙なリアルさ」と「非現実」の共生をなしたアニメ作品は、WIT STUDIOの制作する「進撃の巨人」「甲鉄城のカバネリ」です。
人間が持つ“欲”“恐怖”などなどのドス黒い感情の渦を垣間見える、妙なリアルさを感じる作品だと思います。
さて、誰がどう見ても作品本編の評価をここまでしていないのですが、前置きとして――長いけども――必要だったので、書かせてもらいました。
ぶっちゃけた話、非常に読みやすく、根本的な面で私みたいなポンコツが指摘する点はありません。
規定通り十話までしか読んでいませんので、「それ○○話でやったわ」というのがあるかも知れませんが、その場合は聞き流してください。
全体的に読んでみて、書き方や表現に違和感を感じませんでした。
読み始めて数分で素直に「おお、すげぇな」と思った作品です。
ただ、異世界へ行ってからの流れが早すぎると感じました。
異世界転移と言えば、召喚するための部屋に召喚されたとか、王の間に召喚されたとかが王道だと思います。
今回の場合は、確かに召喚に応じての異世界転移なのですが、知らない場所に投げ出されたという形になります。
わかりやすい例を上げれば、「問題児たちが異世界から来るそうですよ?」とか、「魔法先生ネギま!」魔法世界編冒頭の強制転移みたいな感じです。
問題児の場合は召喚地点に案内役がスタンバってたということで事なきを得ます。ネギま!の場合はバラバラにされた仲間が全員揃うまで五、六巻は掛かったかと思います。
つまり、「異世界に投げ出されて右も左も分からない!」というテンプレ要素は、変幻自在の冒険劇と成りうるのです。
後半、主人公がギルドに入った後、侍女から知識を得るシーンは確かにありますが、「人の振り見て我が振り直せ」という諺の通り、その世界の人間を観察して得た知識として描く方が深みが出ます。
まぁ、かという私も「才女」の方で省略気味なので偉そうな事言えませんがねorz
それはさておき、折角、外に放り出されたのに拾われるまでが早すぎるのは勿体無い。上記の通り、色々と失敗して経験するという妙なリアルさを追加するだけで深みが増すのではと思います。
参考になるという意味では、今年アニメ化した「デスマーチから始まる異世界狂想曲」がよいかと。
あの作品に置いて、主人公は恐らく召喚されたのだろうという結論に至るのですが、その結論に至るのは書籍版だと確か七巻あたりです。
自分が何故この世界に来たのか推測を形にするまでに七巻要したのです。また、十三巻にて、主人公の転移に関わったであろう神様的存在が登場しますが、主人公の召喚に関する真実は十四巻出た今でも明かされていない訳ですね。
ジャンプが人気作を伸ばして伸ばして最後の方に連載される作品に作り変えてしまうような無理――BLEACHは実写化しましたけどね――をしない程度に、伸ばせるイベントは後に後に伸ばすとゆっくり書き込むことが出来ますからいいかもしれません。
次に、感嘆符と疑問符があまりないように感じました。
特に疑問符ですが、「何でないのかなぁ……」と思う箇所が複数箇所見られました。作風かもしれませんが、キャラクターの感情を表す重要な記号なので使わない手はないかと。
ただし、SEED Destinyの「力はただ力。多く望むのも愚かなれど、むやみと厭うのもまた愚か」という言葉にある通り、超絶便利な記号「!」「?」「!?」「?!」「……」「――」ですが、多用は禁物。あくまで程々に。ただ、ないとそれはそれで如何なものだろうか?ということですね。
これに関しては幾つか、気になる点があったので、指摘しておきます。
―第一話より引用―
【元】
「なに言ってんの!
あんた机にちょっと触っただけじゃない。
黒板も拭いてないし、ほうきがけもまだよ。
それから……」
【修正案】
「なに言ってんの!
あんた机にちょっと触っただけじゃない。
黒板も拭いてないし、ほうきがけもまだよ。
それから――」
――
「……」「――」の使い分けは難しいと思います。私も迷いますから。
特に「――」は何方かと言うと()の意味として使うのが一般的です。
「こいつは斉藤。幼稚園からの腐れ縁――何故か毎年同じクラス――の親友だ」みたいな感じで使います。
ただ、静寂の意味でも使います。
「……」は自発的に無言になっていく感じ。「は? 何でだよ……」みたいな。
「――」は作者の都合で省略されていく感じ。「ほら、見ろ。言った通りだろ? だから、お前は――」「うるせぇ!」みたいな。こうすることで、ああ、主人公が最後まで聞かずに遮ったんだなって分かります。
上記の場合、「それから」の先に続きそうだけど、長いし話がダレるから省略するために使う感じですかね。極端に言えば「(ry」みたいなイメージで良いかと。
―第五話より引用―
【元】
「だ、旦那様ですって!
あなた、史郎君に何したの?!」
【修正案】
「だ、旦那様ですって!
あなた、史郎君に何したの!?」
――
「!?」「?!」と二種類の記号があり「どっちだ?」と悩むと思います。実際、どちらも利用するものですので、書き順として間違いがあるかと言えばありません。
しかし、用法に違いがあります。
他のページでも書いてますので重複する内容になりますが、「!?」はビックリした後に疑問に思うものです。
例文を挙げます。
―例文―
段々と相手の攻撃が読めてきた。
最初こそ何度か裾を切られてしまったが、今は完全に受け流せている。
ここで押し切ろう。そう思い足を踏み込んだ瞬間だった。
「っ!?」
何かが俺の胸を切り裂いていた。
相手の手にはまだ剣がある。振り抜いた形跡もない。
それだけじゃない。俺は確かに目の前に剣を構えていたのだ。
――
この場合、お互いに剣を持って向き合い構えているわけで、攻撃されれば剣を避けざるを得ない。つまり、前動作なしに切るなど普通は出来ないわけです。
しかし、相手は常識外れの一撃を放った。それも、目視できない上に剣を避けた一撃を。
切られているのですから驚き(!)ますし、何故切られたのか分からないから疑問(?)に思いますよね?
だから、「!?」になるのです。
―例文―
――枢機卿の企みが未だに見えない。何とかならないか?
国王陛下に調査依頼をされ、教会に侵入してみたものの手がかりになりそうなのは手帳だけだった。
しかし、手帳の中身はどこもかしこも日常の出来事を記した日記でしかない。
(ハズレか……)
そう諦めかけた時だ。ふと、不審な箇所を見つける。そこの部分だけ内容が不自然なのだ。
「――っ?!」
これは暗号だった。中身の内容を入れ替えていくことで完成する本当の内容。それこそが、枢機卿の企てた“国王陛下暗殺”の全貌だった。
――
この場合、主人公はその手帳が日記にしか見えず、これが手がかりになりえるのかと疑問(?)を持ち始めます。しかし、気付いて驚いた(!)訳です。「ああ、そういうことか!」と。
だから、「?!」になるのです。
問題のシーンでは、舞子が「何で旦那様って呼んでるの」と驚くと同時に、疑問に思ってますので「!?」が適切かと思います。
本当に最後になりますが、第三話でちょっと気になった点が――
―第三話より引用―
まもなく、白馬に乗り銀色の鎧を着けた三十代の男性が現れた。
金色に光るブロンドが鎧に映え、やけにかっこいい。これは、女性が放っとかないな。
――
女性が放っとかない。は別に悪くないと思うのですが、普通は「これは、男が放っておかないな」と使うかと思います。
現実世界ではそうも言ってられませんが、基本的に物語の場合は男が尊厳が守られるように書かれます。
「これは、女性が夢中になるのも頷ける」と表現すると、男を持ち上げることになりますし、「これは、男が放っとかない」と表現すると、男の尊厳を守りつつ女性を持ち上げることになります。
しかし、「これは、女性が放っとかない」と表現すると、何となく、本当に何となくですが、女性が上で男が下。という風に見えます。
男が年下で保護よく唆られる可愛い系なら問題ないとは思いますが、男のイケメン性を見出すなら「夢中になる」「虜にする」といった表現の方が良いのではないかと思います。
脱線のしすぎで、今の所、もっとも長い評価になりましたが、参考になれば。
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