5話 昔話

2人を置いて家を出た黒狐。

彼もまた、羊と同じで疑問を持っていた。


彼女の笑顔が昔の義理の妹にどこか似ていて、けれどその子は遠い昔に亡くなった。


「じゃあ...あの子は誰なんだ?」


昔出会ったその子は絶滅種族とされていた熊猫種族の双子の姉弟。


けれど、その2人は俺の目の前で消えた。今でも思い出すだけで、吐き気がするほど嫌な思い出だ。


俺は頭を強く横に振り、森を出た。



暗闇で少女とそっくりな顔をした少年がポツポツと光る不思議な空間であなたに話しかける。


「そう、僕と姉さんは死んだんだ。

あの日あの時、共に悲劇を繰り返し死んだ。」


光がない瞳でこちらを見つめる少年。


「そうすることで、もう悲劇を終わらせようとした。熊猫種族は消えたってしてさ、だけど僕は姉さんに生きて欲しかった。」


熊猫種族は簡単に言えばチート能力を持った存在。

好きなこと何でも3つ叶えられる能力。そして、人並外れた身体能力と寿命がない不老不死。


「僕は死ぬ前に能力を使った。

この悲劇を終わらせて、世界を復讐劇にすると願った。...と、まぁここまでは僕が世界に対する愚痴でしかないね。」


少年はあははと笑いながら、光る水晶玉に手をやり貴方に差し出す。


「あの3人が知らない、本当の悲劇を僕が貴方に教えてあげる。」


そして、この空間は光に包まれた。

どこからか、鳥のさえずりと少年少女の楽しそうな笑い声が聞こえます。



そう、これはとある事件で3人の子供が家族を失った昔話。


まず1人目の子供は、種族の能力、魔力がどこよりも強いという為、使い捨て兵器ということで家族を国に奪われてしまいました。

そして、両親が何とか自分の種族を残そうと、双子を逃がしました。



2人目の子供は、国からも家族からも愛されて笑顔の耐えない暮らしをしていました。


ある日のことです、海の近くで少年少女がボロボロに横たわっている姿を見つけた1人の少年はその双子を自分の家に住ませることにしました。

数日後の事です。


とある狐種族の強盗団が絶滅種族の双子を羊種族が拾うのを目撃し羊の家族を襲いました。

それは夜のこと。

双子が寝ている時に起こった悲劇。羊の少年は目の前で両親が殺されるのを見てしまいました。


少年は必死に逃げ双子の元へ行きましたが、その時にはもう手遅れで。双子は狐種族の強盗団へ連れ去られてしまいました。


檻の中、目を覚ました双子は突然の状況に頭がパニックになってしまいました。


そして、優れた身体能力と魔力で檻という結界を破り、逃走しました。



その後双子は狐種族の家族に出会い、そこに拾われ生活をしていきました。


最後の3人目の子供は、とても幸せな暮らしをしていました。

その子供は国から少し離れた森の中に住んでいました。

そして、両親に愛されて幸せいっぱいな日々でした。

しかし、その幸せも束の間に消えてしまいました。


ある日のことです。

絶滅種族がその家族に拾われた事が知られ、国の頂点に立つ羊種族が森を燃やしました。

狐の両親は狐と双子を逃がし亡くなりました。


崖まで追い詰められた三人。

突然の銃砲。

狐の目の前を遮る絶滅種族の姉。

姉はそのまま落下し、それを追いかけ双子の弟も撃たれ落下。


そして、姉を庇いながら双子の弟は亡くなりました。


双子の弟を亡くし、関わった人の家族が消えた少女。

新しい家族となったと思った瞬間に全てを失った狐の少年。



少女は世界を嫌いました。

羊の少年は罪人を嫌いました。

狐の少年は狂人を嫌いました。


そんな三人は、時が経つにつれて変わっていき、とある職のシークレット人物となり、誰にも知られない1番上の地位に立つ存在となりました。


全てはこの世界を壊すためだけに

仕立て上げられた計画の1つ。


僕は信じてるよ、あの3人が世界を覆し滅ぼすことを。


僕があなたに教えてあげられる事はこれくらい。この先は自分たちの目で見届けて。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る