1話 安い物件
「んっ〜。よく寝た。」
朝日がカーテンの隙間から私の部屋を照らす。
目覚まし時計なんてなくても、この世界の太陽はいつも同じ時間に登るため煩い目覚まし時計より、眩しすぎる朝日のおかげで目覚め、快適な朝を迎えることができる。
そして、いつものようにベッドから起き上がり数歩歩いて台所へ向かう。
森に囲まれたこの家はとても空気が美味しく静かで居心地がとてもいいが、買い物のため街へ行くまで少し時間がかかるというデメリットもある。
そのため朝の市場で買い物するには距離的に不便だ。
「まぁ、格安で買えたのは良かったけど、ワケあり物件だからね...。」
そう、この世界はとても物騒なことに殺人事件が多い。
そのうえ、偽善者というよりは人の意見を肯定する事しか出来ない人々は冤罪で裁かれたとしてもそれを酷くは言わなかった。
この世界は甘すぎる。
自己防衛もできなければ、悪を責めることすはできないんだ。
だから
「罪ある人が生き残り、罪なき人が死んでいく。」
私の種族もそうだった。
「まぁ、そんな事今はどうでもいいんだけど...ね。」
元々この家に設置されていた古い時計はそろそろ朝の4時を指す。
「そろそろ行こうか。」
絶滅危惧種とされたパンダ種族の私は、この世界からしたら最終兵器。誰よりも強い魔力を持つ種族とされていたから。バレたらスグに箱庭行きだろう。
だから、私は正体を隠すため髪の毛をお団子にし耳を隠し、髪の色は白と黒のパンダカラーなためブカブカの帽子の中に残りの髪の毛を入れ被った。
ちなみに、ここの家の家賃が安いのはこの森が"特に"殺人事件が起きやすいからそうで。
食材が無事なら別に生活していけるからいいんだけど...と軽い気持ちで思いながらさっき冷蔵庫見たら残りが卵だけだった為、流石に生命の危機を感じた私。
改めて洗面所に行き、鏡の前でクルリと周り自分の姿を見直す。
「これなら、大丈夫ね。」
最後にメガネをかけて私は家を出た。
また1日つまらない日を送るのは嫌だけれど、今日はお気に入りのぬいぐるみを家に迎えた5年記念日だからパーティの料理を考えて1人ソワソワしていた。
このパンダのぬいぐるみは、今はいない双子の弟が最後の誕生日に私にくれた大切な形見。
ある事件のせいで、このぬいぐるみは血だらけになってしまったけれど、クリーニングに出して今では昔のような輝きを持つ。
今日で5年記念日。パーティの準備ご楽しみで私の歩くペースは少しずつ早くなり、森を抜けていく。
一本道のこの下り斜面は風が吹くと直接自分に当たるためとても気持ちがいい。
「さぁて、今日も市場でおまけしてもらうぞー!!!」
と、誰も居ないはずの森で叫んで私は市場までラストスパートをかけ走っていった。
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誰も居ないはずの森で。
いや...。
誰もいなくなったはずの森で。
1人の青年が少女と違う複雑な道から歩きながら、手にチラシを持ち森へ向かっていた。
「...なんでこの家だけこんなに安いんだ?」
少女のウッドハウスに着いた青年は1人首を傾げながら疑問を持っていた。
「..."シェアハウス"だから安いのは分かるけど...。まぁ安いが1番だし別にいいか。」
青年はウッドハウスから目を離し、嬉しそうにチラシを眺め不動産屋に向かっていった。
歯車は回り出す。
それが善か悪か、どちらに進むか分からない。
なぜなら、
この世界がクズだから__
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