第6話 始まる友情
「つくづくついてないな。今度こそ上手くいったと思ったのに。」
トントンッ
自室を出て階段を下り、一階にあるキッチンの冷蔵庫からお茶を取り出した。
ゴクゴクッ、
随分と想像の世界に入り浸って脱水状態だった。
その水は唇を、舌を、その先にある体の内部を、乾いた砂に水を落とすように濃く、黒みがかった潤いを与えた。
「そうだ、彼女なんて、女なんてめんどくさい、次は友情だ。心を許せる友人と、少し苦手な知り合いと、青春と呼べるような楽しい夏を過ごすんだ。」
水分を摂り終え自室に戻る足取りを、そのアイデアは少し軽くしたように思えた。
「そうだな、」
ポワン!
「うわ、まぶし!」
趣のある木造建築の和風一軒家の縁側、白い絵の具を垂らした群青の空に、燃える青を映やした緑の田。
戦後、高度成長期を始めた日本。
だが、時代に取り残されたこの山村は、巡る風景の変化を感じさせなかった。
「よし!こんなもんかな。」
イメージは某有名映画会社の作品にあった、記憶の中の山村。
「おーい!昌也ー!」
インターフォンも無いこの家は、人を呼ぶには玄関で叫ぶしかない。
「は、はい、」
「おう、昌也。どうしたそんなかしこまって?」
玄関にいたのは中学生くらいの男の子。
程よく焼けた肌で明朗快活な声で伸ばした腕の先に薄汚れた虫取り網を持っていた。
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