第2話 軌跡の末

「んー、夏休みって言ったらー。」

 ノートを走るペンが書いた軌跡は彼なりにリア充が過ごしそうな夏休みのキーワードを次々と連ねていった。

「海、夏祭り、花火、デート、虫取り、部活、…」

 書き出していくたびに、これもあった、あれもあったと、出てくるキーワードたちを一通り書き終え、その殴り書きを眺めた。

「はぁ〜、」

 キーワードは浮かぶのにそれを実行する環境にない自分を思い、重たく失望に塗れたため息がこぼれた。

 こんなものを書き連ねてどうするのか、ただ自分を落ち込ませるだけじゃないかと、ノートを閉じかけたその時、彼の脳にある一筋の光が射した。

「そうだ、俺が過ごせないなら、リア充夏休み生活を創り出してしまえばいいんだ。そうと決まればどうしよう。取り敢えず主人公は…。」

 自分が過ごせないのなら、自分でリア充夏休み生活を創って過ごした気になろうというなんとも安直な考えだが彼は燃えていた。

 題して【目指せ!理想のリア充夏休み創作】である。

 走り出したペンは主人公の名を昌也と決め、まだ散らばった物語のピースのかけらを集めていった。

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