しがない夏休み

かなる

第1話 惰性は終わる

「ふぁ〜」

 彼は目覚めた。ただ、カーテン越しに漏れる閃光と、歌い止まないセミの声が彼に今が気持ちの良い朝でないことを伝えた。

「暑い、」

 都内の高校に通う足立昌也は先週から始まった夏休みを充実して過ごしている…。

 ピッ!

 何か思う事もなく机上のゲーム機の電源を入れた。

 カチッ!カチッ!

 無機質なコントローラーを叩く音だけが部屋にこだました。

「あー、今日もまたこの生活だよ。」

 そう、この昌也という男、夏休みということで自堕落な生活を先週から毎日送っているのだ。

 だが、彼の漏れた声から分かるように、彼は自分のこの生活に多少の負い目がある。

 学生たるもの勉学に励む訳でもなく、気の合う友と出かける訳でもなく、気になるあの子とデートに行く訳でもない。

 我ながらなんとつまらない夏休みだ、と一人きりの部屋で思うのである。

 それでも何かを変えてみようと、一週間続いた惰性を断ち切るべくコントローラーを置いた。

「どうにかして、誰もが憧れるリア充夏休みを過ごせないものか。」

 昔から文字に起こすのが好きな昌也は勉強する訳でもなく、置いてあったノートに形のないリア充夏休みを書いていった。

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