第2話
ちゅんちゅんちゅん
鳥たちの鳴く声が聞こえる…… ここは外? それになんだか少し肌寒い…… ここは外?私は自分の状況を確認するために寝ている体をおこし、目を開けた。
「ここはいったい? それになんだか声もおかしい?」
私は声に違和感があった。 今までは少し高いぐらいの声だったのに子供の声にしか聞こえなかったからだ。 周りを見てみると、とてもきれいな湖とその湖を囲うように花が咲き乱れていた。
「うわぁ? 綺麗……」
花の周りには鳥たちが群れで飛び、その後を追うように花びらたちが舞っていた。そのほかにも蝶や蜂、妖精さんのような小さな小人たちもいた。
――って小人? 私は何度もその姿を確認してみるがその姿は間違いなく普段おとぎ話に書かれているようなとてもかわいい妖精さんだった。
すると私に気が付いたのか、小人さんたちがこっちに飛んできた。
「目が覚めたのね。可愛らしい少女さん。 お花さんたちが私たちに知らない子が倒れてるって教えてくれたの。 でもあなたは気を失ってたし、体も傷ついていたから、私たちで治させてもらったわ」
そう私に話しかけてきたのは緑色の服を着た、赤目の小人さんだった。 彼女は周りにいるほかの子たちよりも少し大きくかった。
「あなたたちが助けてくれたんですね? ありがとうございます。 ――で、ここは? どこですか?」
小人さんたちにお礼を言って、現在地を聞くと、小人さんたちが少しざわざわしていた。 最初の小人さんたちみたいに声が聞こえるわけではなかったけど、耳に手を持っていき、何かを話していることから小人さんたちで何か相談しているんだろうと私は予想を立てた。
「あなたは本当にここがどこだかわからないの?」
「はい…… どうやら私がいた場所とは全然違うところみたいなのです」
「そう…… それじゃあ、なぜあなたがここに来ることになったか、経緯はわかる?」
緑の小人さんにそう言われ私は向こうの世界の事、私の事、すべてを話した。
「大変だったのね...... それで気になったことがあったのだけどあなたがこっちに来た時に女性の声を聞いたのね?」
私はうなづいて答えた。あの時最後に聞いたあの声にはとても安心感があった。あまりにも短くよく分からなかったけど暖かいヴェールに包まれる感じだった
「多分、というかほぼ確実でその声の女性があなたをこっちに連れてきた本人でその正体は多分だけど私たちの種族の王 ウミェール様だと思うわ」
「ウミェール様? それに妖精って...... おとぎ話だけの空想じゃないのですか?」
「そうね。 人間にはあまり姿を見せないから言い伝えに尾びれがついておとぎ話になっちゃったのではないかしら?」
「それに決して間違いではないの。 人間が私たちを見るには私達との繋がりを強くするか、元から見えていた子にしか見えないわ。 だからどれだけ私たちを詳しく本に綴ろうとも物語にしかならないわ」
なるほど、つまり妖精さんたちの姿をどれだけ正しく書こうとも見える人は限られているから必然的に創作物の生物になっちゃうって訳だ......
もしかしたら私の世界にも創作物だけの生き物と知られた動物達も目には見えないだけで本当は存在したのかもしれない。
なんだかそう考えると世界はまだまだ未知なことだらけで不思議だ。
「それでなぜあなたが私たちの姿がはっきりと見えるのか、だけどそれはあなたはこっちに来る時にウミェール様の力を引き継いだのね。
だからあなたはそんな姿になったわけだし、あなたからはちゃんとウミェール様の気配を感じるわ。 だけどウミェール様の力は強大だから力を使う時にあなたに対してデメリットがあるかもしれないから気をつけるのよ?」
「力ですか...... 一体どんな事ができるのですか?」
「それはこの世の全ての自然を操ることが出来るわ」
「自然のすべて......」
そんな強大な力が私の中にあると考えるととても恐ろしかった。 もし何か起こったら……
もし力が暴走してしまったら……
気がつくと私はとても不安そうな顔をしてたのかもしれない…… そんな私を妖精さんたちは小さな体でギュッと抱きしめてくれた。
「大丈夫よ。 その力はあなたがあなたでいる限り決して暴走することはないわ。 それにその力は絶対にあなたの為になる。 だから頑張って使い方を覚えましょう?」
緑の妖精さんは私の頭を撫でながらそう言ってくれた。 頭を撫でられるのもとても久しぶり。 このふわふわとして胸の中があったかくなる感覚。 私はこれが大好きだった……
なぜなら私が生きているという証明だったから。
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