第96話美容院で髪を切る
雪絵が退院してからすぐに、園里は雪絵に対して、
「雪絵。まず美容院でその髪の長さを、なんとかしなさい!」
園里はまたしても厳しい口調で、そう怒った。それを聞いた雪絵は、
「なんで……面倒くさい……」
と、今にも消え入りそうな声で、そう返事を返した雪絵に対して、園里は相変わらず鋭い口調で、
「そんな髪の長さじゃ、どこの大学だって入れてくれないわよ! もちろん慶応もしかり!」
園里の怒りがこもったその言葉を聞いた瞳が、口を挟んで、
「私の行きつけの美容院があるから、そこで可愛くしてもらおうよ!」
と瞳は雪絵に言うのだが、肝心の雪絵は、
「別に可愛くなんて……してもらわなくても……別に良いのに……」
などと言ったものの、最終的には雪絵は瞳たちの説得にようやく応じて、髪をそれこそバッサリと切ることになった。
瞳の行きつけの美容院とはいえ、さすがに雪絵を担当した美容師さんも、雪絵の髪の長さには、少し驚きを隠せない様子だったが、すぐに、
「どのぐらい切りましょうか?」
と美容師さんが雪絵たちに聞いてきたので、
「この子今度大学を受験するので、それにふさわしい長さで……。というか思いっきりバッサリと切っちゃってください!」
と瞳が言う。すると今日子が、
「今の瞳ちゃんぐらいのベリーショートにしちゃうと、多分雪絵ちゃん昔を思い出しちゃうかもしれない、フラッシュバックしちゃうかもしれないから、セミロングぐらいの方が、良いんじゃないかな?」
と今日子が提案し、雪絵は「じゃあ……そのぐらいで……」と応じた。
「今回はさ、前髪作ってもらおうよ。前髪!」
と、またもや瞳が提案する。
「セミロングで、なおかつ前髪まで作るとなると、全体的にだいぶバッサリと切っちゃうことになるけど、それでも大丈夫かな?」
そう美容師さんは一応は聞いてきたが、ここで園里が、
「この子大学受験が控えているので、思いっきりやっちゃってください!」 と押し切った。
こうしてずいぶんとバッサリと髪を切り終わった雪絵は、表情に硬さが顔に残るものの、案外さっぱりとした雰囲気であった。ただまだ少しだけ表情に、暗さが残ったままであったが……。すると瞳が、
「ユッキーさ。だいぶ可愛くなったじゃん! やっぱりユッキーには、そのぐらいの髪の長さが、きっと一番似合っているんだよ!」
瞳は雪絵を気遣ってか、努めて明るく雪絵にそう言った。
それを聞いた園里もすかさず、こう質問を投げかけてみた。
「どう雪絵。あんな『リング』シリーズの『貞子』みたいな髪の長さの状態から、解放されてみて、率直にどう思った?」
瞳と園里のその言葉を聞いた雪絵は、
「うん……少し軽くなって……いい感じ……かな?」
とだけ雪絵は瞳と園里に、そう答えた。
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