第95話雪絵が栄養失調で病院へ運ばれる
そしてまた、いったん話は雪絵たちが、それぞれの高校を卒業してから、雪絵が休養に入り、そして雪絵が実際に慶応大学に入るための、受験勉強をはじめる直前の頃まで、遡ることになる。
雪絵は病状が、日々の生活面でのストレスで、かなり精神状態が悪化しており、いつも飲んでいる薬に加えて、頓服として処方されている薬まで飲まないと、眠れないようにまで悪化していた。
雪絵がOD(オーバードーズ)しないようにと、雪絵の飲んでいる薬は、雪絵の母親が管理をしていたのだが、雪絵は毎日のように母親に、
「お母さん……また眠れない……お願いだから追加の薬を……飲ませて……」
そう何度も雪絵の母親にお願いをしていた。でも頓服の薬まで飲んでも、それでもなかなか寝付けない夜も多々あり、
「もう嫌……こんな夜に眠れない生活……」
そう雪絵は、ベッドの中で泣きじゃくりながら、
「昔みたいに……自然に……普通に眠りたい……」
そう雪絵はベッドの中で嘆くまでに、雪絵の症状は悪化の一途を辿っていったのだった。
しかし雪絵はとうとう、頓服の薬まで飲んでも、それでも眠れないときは、雪絵は無理に寝ようとするのを仕方なく諦めて、受験のための試験勉強をやりはじめて、体が自然に眠くなるのを待つか、もしくは日中に昼寝をしてしまうかの、どちらかの生活となってしまっていた。
夜中に起きて慶応大学に入るための受験勉強をして、日中に昼寝をするなんて、完全に昼夜が逆転している状態であった。
そこまで雪絵の病状は、悪化していったのである。
そしてとうとう毎日の食事の方も、どんどん胃が受け付けなくなるようになっていった。
そしてついに十月のとある日に、雪絵が栄養失調により、慶応病院へと搬送されてしまったのである。
その知らせを聞いた瞳と園里、そして今日子の三人は、雪絵が搬送された慶応病院へと、三人ですぐさま向かった。
病棟で雪絵が入っている大部屋に入った三人は、点滴につながれている雪絵を見て、三人はギョッとした。髪の毛が伸び過ぎている。まるで『リングシリーズ』に出てくる『貞子』の様相そのものであった。おそらく高校に入ってからの三年間の間に、雪絵は一度も髪を切っていないのだろうと、三人は容易に推測が出来た。
雪絵のそのやつれた姿を見た園里が、
「何で栄養失調なんかで病院に運ばれるのよ! 何できちんと毎食ちゃんと三食の食事を取らなかったのよ?」
そのように園里が怒りの形相で、雪絵に対してそう問い詰めると、雪絵が今にも消え入りそうな、小さな声で、
「だって……ここのところ全然……お腹が空かなかったから……」
雪絵はそう園里に、力なく答えるしかなかった。
さらにたたみかけるように問い詰めようとした園里を、今日子が何とかたしなめた。
しかし園里は完全に頭に血が上った状態で、
「雪絵の親も親よね。鈍感にもほどがあるわ。仮にも自分たちの一人娘でしょうが!」
そう言った園里の怒りは収まりそうにないが、今日子が、
「まあ助かったんだから、一応ね。良しとしようよ」
「良くないわよ!」
今日子のこの一言に、園里は「ふざけないで!」とでも言いたい様な、完全にキレている表情で、
「今日子は本当に『ラウド・ゼロ』って人格に『怒り』の感情をすべて持って行かれているのね。誰にでも優しいのはあなたの長所だけれど、教師になったらどうしても怒らなければいけない場面って、絶対にやって来るのよ!」
そう園里は今日子に対して、完全に憤った口調で、そう言い切った。
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