第57話牡蠣ラーメン『佐市』へ行く
徹也と秀美は二人で錦糸公園を散策した。徹也が感慨深そうに言う。
「癒される場所だよな、この錦糸公園って……。いつも来るたびに、本当にそう思うよ」
「てっちゃんにとっては、思い出深い場所なんだね」
「昔とは周りの建物も、なにもかもが変わってしまったけど、雰囲気だけは、俺が子どもの頃と何も変わらないのだからね」
時間はもう夕飯を取るぐらいの時間になっていた。徹也が秀美に、
「夕飯はどうしようか? もう少し歩いたところに『牡蠣』が入っている、俺の行きつけのラーメン屋があるんだ!」
徹也がそう秀美に聞いてみると、秀美は、
「じゃあそこへ連れて行って欲しいかな」
と、秀美は徹也の提案をあっさりと承諾した。
「ところで、てっちゃんってさ……。今誰かと恋愛をしていたり、もしくは好きな女性とかって、いたりするのかな?」
牡蠣ラーメン『佐市』まで行く途中で秀美は徹也に、突然そんな質問をしてきたので、徹也は正直にありのままに、次のように答えてしまった。
「ああ『今日子』のことね。実は中学校のときの同級生で『橋部今日子』って女の子が、俺と同じクラスにいたのだけれども、その今日子って女の子のことが、昔は凄い好きだったかな? まあ今でも今日子に対して好きなままでいる気持ちには、特に大きな変化は起こっていないというか『今日子が好きだ!』って気持ちには、俺の中では何も変化は起こっていないし、そして女々しいことは、今もいまだに今日子のことが好きな気持ちが、捨てられてはいない点なのだけれどもね……」
その徹也が話した一連の話を聞いた秀美が、少し悲しそうな表情を一瞬見せたのを、徹也は完全に見落としてしまっていた。それが後に、秀美との重大な話へと発展するなんて、そのときの徹也には、とてもじゃないが、知りようもなかった。
そんな話を含めた、たわいもない話をお互いにしながら歩いていると、牡蠣ラーメン『佐市』に、徹也と秀美は到着した。食券を買う際に、
「あの……お金は?」
という秀美に対して、徹也は、
「ああいいよ。お前さんはお金出さなくて、大丈夫だからね! 今日は俺が全部出しておくからね……」
と秀美にそう言った。そして徹也は『味は保証する』と言ったように、自信満々に、
「ここのラーメンの、牡蠣の出汁が濃厚につまったスープは、絶品だよ!」
徹也がそこまでそう言うので、秀美は味を期待して、ラーメンがやって来るのを待っていた。そして運ばれてきた牡蠣ラーメンは、秀美の期待を、大きく上回るものだった。
二人がラーメンを食べ終わった後、秀美が徹也に、
「牡蠣ラーメン、凄く美味しかったね。でも今日はてっちゃんになんでも奢ってもらって、なんだか申し訳ないなあ……って」
それを聞いた徹也は秀美に、
「気にするな。俺が勝手にお前さんを振り回したのだからな」
徹也はそう言って徹也と秀美は、JRの錦糸町駅まで一緒に歩いて、そこでこの日は徹也と秀美は別れた。
徹也はこの日の夜に、健に電話を架けて、その秀美という女の子は、教育学部に通っていて、今日一緒にビリヤードをやったり、あとは徹也が時間があるときにでも、大学で必要な数学や物理を教えてあげることになったことを話した。
それを聞いた健も、基本的には徹也とその秀美という女の子との関係が上手く続くように応援するといった内容の返事を、健は徹也に返してきた。
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