第56話ビリヤード終わり

(秀美もそろそろ少しは慣れてきたな……)

 そう思った徹也は、次の課題である『ブレイク』の話を持ち出した。

「俺が出した課題は、これで全部クリアーだね。じゃあ今度は『ブレイク』そのものをやってみようかい!」

徹也はブレイクときのアドバイスとして、

「ブレイクはとにかく、おもいっきり全身の力を込めて、強く突くのがコツなのね。ただ肘にかける力だけで突くという基本は、忘れないようにね。最初は思うようには、突けないだろうけれども……」

 そう言われた秀美は、ブレイクをやってみた。手玉からぶつかった的玉はいい感じに、台の全体に広がった

「さあ。さっきと同じルールで全部の的玉を、ポケットに入れてみてごらん」

 そう言われた秀美は、ある狙った的玉をポケットに入れようとした。しかしその狙った的玉はポケットに入らず、逆に台に跳ね返った手玉が、予期していなかった的玉へとぶつかって、その的玉がポケットへ入ってしまった。 それを見た徹也がすかさず、

「今、本来入れようとしたポケットには入らなかったけど、別の予期していなかった、別のポケットに入っただろう? 俺も今でもときどきそんなことがあるのね。初心者にはそんな『予想外も起きる』ことも、ビリヤードの面白さの一つだったりするのだよね」

(そうか……それでてっちゃんは、ビリヤードにはまっているのね……)

 秀美は妙に納得のいった様子だった。


 二人は気がついたら休憩を挟んでいても、合計三時間半も、突いていた。

「そっか……。合計で三時間半も突いていたんだ。だから結構疲れるんだね」

  秀美がそう言うので徹也は、

「そりゃ、初心者が初回で三時間半も連続で突けば、誰だって疲れるよ」

 と、徹也は秀美を労った。

 徹也と秀美は四階に降りてきて、キューを返し会計を済まそうとした。すると秀美が、

「私はいくら出せば、いいのかな?」

 と聞いてきたので徹也は、

「誘ったのは俺だからね。代金は二人分は、俺が全部払うよ」

 そう徹也は言って、二人分の代金を全額徹也が支払った。

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