第37話雪絵と今日子の電話

 その日の夜、雪絵は今日子と電話で話をしていた。

 今日子は雪絵と、その『重森さん』という男の子と、上手く付き合えていることを聞いて、

「なんか雪絵ちゃんの話を聞いているとさ。良い感じに、付き合えているみたいだね! その『重森さん』っていう人とさ……」

 今日子は労いの気持ちで、そう言葉を雪絵にかけたのだが、とうの雪絵は次のように涙声になって、今日子にこう言い切った。

「私って病気なんだよ……病人が恋愛なんて……出来るわけないじゃない!」

 雪絵は今日子に当たるように、そう言い切った。それを聞いた今日子は、

「そんなことは……」

 今日子はそう言って、会話が途切れないように続けて、

「そんなこと言い出したら、私だって『解離性同一性障害』って、精神科で取り扱う病気を持っているわけだし……」

 今日子の言葉に、雪絵は自分に対して、温かみのある言葉をかけられているのかどうか、それとも全くないのかどうかさえ、雪絵にはもうそのことが、わからなくなってしまっていた。

「私……一体これからどうしたら……良いのよ……」

 雪絵はそれだけ言って、一方的に今日子との電話を、切ってしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る