第75話お昼休みに重森と
あくる日、授業がない時間に雪絵がチョコレートを学食で食べていると、急に重森がやってきて、雪絵に声をかけた。
「なんか雪絵さんって、あの後から会うたびに、いつも何か食べているような、そんな気がするのだけれども……。雪絵さんってそんなに頻繁に、お腹が空くのかな?」
そう聞かれた雪絵は、少し困った顔を見せた後で、こう重森に答えた。
「うんうん……別にお腹が空いているわけじゃなくって……中学のときの友人から……その女の子って今医学部に通っているのだけれども……私ってどうも相当痩せているように見えるらしくて……それで意識して間食しろって……その女の子から……そう言われていて……」
それを聞いた重森は、こう言ってきた。
「そうなんだ。前からなんか雪絵さんって、結構細身な体形だなあって、思ってはいたけれども」
(私ってやっぱり誰から見ても……痩せて見えるんだ……)と、雪絵は(意識はしていなかったけれども……)と、改めて自分の体重のなさを認識した。 重森が続けて話しかけてくる。
「チョコレートなんかいつも食べていて、虫歯にはなったりしないのかな?」 すると雪絵は、重森にこう言った。
「普通はこのぐらいの頻度で……チョコレートなんて食べていたりしたら……虫歯になるのが普通なのだろうと……思うのだけれども……うちの家系って……歯は結構強い家系みたいなの……だからかれこれ今までずっと……私って虫歯はないの……」
このぐらいの頻度でチョコレートなんて食べていたら、子どもであれば普通は間違いなく虫歯にもなるはずなのだけれども、やっぱり珍しく雪絵には虫歯は一本もない。
「奥歯も虫歯になっていないんだ? それってずいぶんとめずらしいね!」
重森がそう言うと、雪絵は、
「うん……ときどき行く歯医者さんからも『治療した歯のない子を見たのは、久しぶりだなあ!』って言われたぐらい……やっぱり治療した歯がない人って、今は珍しいみたいなの……」
「俺も治療した歯はないのだけれども、確かに少数派だよね。子どもの頃に歯を治療したことがないって……」
雪絵は話を遮ってしまったと、後に後悔はしたが、重森に対して、
「一個……食べる?」
雪絵はそう言って、手に持っていた『アーモンドクラッシュポッキー』の箱を一つ、重森に差し出した。
「ああ、雪絵さんありがとう!」
重森も雪絵からのささやかなプレゼントを、ためらうことなく受け取った。
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