第53話ダーツについてその2

 徹也の物理的な解説が続く。

「手を離れたダーツが、実際には動いているということは、時間が絡んでダーツの位置が変化しているってことだから、一枚のスナップ写真で判明出来るのは、そのスナップ写真を撮ったある瞬間のダーツの位置だけなのね」

 徹也は秀美にも伝わるように、もう少し言葉を選びながら、

「つまり物体の運動を考えるときには、一枚のスナップ写真だけでは、ダーツが動いているのか止まっているのかを判断するには情報が不十分で、実際にダーツが動いているのかどうかを議論するためには、ある瞬間を撮った写真と、その瞬間よりほんの少し時間が経過したもう一つのスナップ写真が必要なのね」

 ただ物理的な表現はなるべく崩さないようにして、徹也は話を続ける。

「二つのスナップ写真を見比べてみて、両方のスナップ写真でもダーツが同じ位置にある場合においてはじめて、ダーツは動いていない、静止していると言えるのね。逆にほんの少しだけ時間が経過したときに撮ったスナップ写真のダーツの位置が変化していれば、ダーツは動いていると言えるのね」

 徹也と秀美はダーツをやっている人の姿を見て、徹也が、

「ダーツをやっている人を見ればわかるけれども、矢の軌道はかなり放物線を描いているのがわかるんじゃないかな? あの軌道を出来る限り直線の軌道にしたければ、矢を投げるときの力を思いっきり込めれば、限りなく矢の軌道は直線に近くなる。あの距離ならなおさらね。ただしそんなことをやったら、矢と的の穴をぶっ壊してしまって、店からこっぴどく叱られて、当然ながら弁償もするだろうけれども……」

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