第32話昼食時に重森とその1

昼休みに雪絵が一人で大学の食堂で、コンビニで買ったおにぎりを食べていると、偶然にも重森が声をかけてきた。「一緒にお昼食べない?」と……。

 雪絵にはそれを断る理由もなかったので「うん……」と力なく答えた。

 重森が雪絵に話しかける。

「失礼な質問だったら申し訳ないのだけれども、ユッキーって、今何歳なのかなって?」

 重森からそう聞かれた雪絵は、こう答えた。

「もう二十歳……私扱いは二浪だから……同級生は二十一歳になりはじめているんだけれども……私は一月生まれだから……まだ二十歳なの……」

 するとそれを聞いた重森は雪絵に対して、物腰が低そうにして、

「俺は一浪してSFCに入ったから、じゃあ『雪絵さん』は俺よりか、一歳年上なんだね」

 重森が雪絵のことを、ついさっきまで、ユッキーと呼んできたのに対して、雪絵が自分の年齢のことを話した途端に、今度は突然『雪絵さん』と丁寧に呼んできていることに対して、何か変だな? と思った雪絵は、

「私のこと……ユッキーって呼ばないの?」

 と聞いてみた。重森の返事はこうだった。

「う~ん。仮にも年上の女性に、あだ名とはいえ呼び捨ては、個人的に嫌だからさ」

「そう……」と雪絵は力なく返事する。

「二浪ってことは、高校三年から数えて合計で三年間受験勉強していたってことなのかな? もしそうだったのなら、相当な努力家だな……って」

 重森が発したその言葉を聞いた雪絵は、

(今までの私の経緯を……ざっと説明しないとダメかな?)

 と思って、次のように重森に話した。

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