第33話昼食時に重森とその2

「私の場合……ちょっと事情が特殊なの……うちの両親って典型的な『慶応以外私立は認めない』って親で……実際両親も両方とも慶応大学出身なの……それで小学校受験から慶応を目指していたんだけど……結局高校受験までも慶応はダメで……そこで多分プッツンしちゃったんだと思う……統合失調症になっちゃって……高校はなんとか卒業させてもらえたけれども……高校生活と一浪にあたる年は治療に専念する形で……だから私的には受験勉強した実感って……実を言うと一年しかないの……」

重森は黙って雪絵の話に耳を傾けて続けている。雪絵も話を続けて、

「本当は慶応でも文学部とか経済学部とか商学部とか……SFCじゃなくって……純粋に慶応と認めてもらえる学部も受けたのだけれど……そういった学部は結局全部落ちちゃって……」

「そうだったのか……」という顔つきを一瞬見せた重森であったが、雪絵は自分の話を続けた。

「元々英語はSFCの問題でも十分に戦えるレベルにあったから……SFC受ける際の受験科目のもう一つを……小論文と数学と……どっちにしようかな? ってなったときに……中学のときの同級生が数学の学科に進んでいて……その子が私に数学を教えてくれたから……結局もう一科目は数学を選択して……それで多分なんとか受かったってレベルなんだと思う……」

 雪絵はコンビニで買ったおにぎり二個を食べ終わり、リプトンのジュースで薬を飲もうとした。重森もコンビニで買ったカップラーメンを食べ終わったようだ。重森が薬を飲もうとする雪絵に聞く。

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