第30話雪絵と重森その8
「じゃあ今度からは、俺もそう呼んで良いかな?」
「うん……」
重森は雪絵の目の調子が悪くなり、表情が硬くなっていることに、さすがに気がついたようだ。
「なんか交番の前で待ち合わせたときよりも、だいぶ調子が悪そうに見えるけれども、本当に大丈夫?」
「うん……ごめんなさいせっかく誘ってもらったのに……眼がこんな調子で……この目の調子になっちゃうと……まともに会話さえ出来なくなっちゃうものなの……」
「そっか。辛いんだね」
「ありがとう……」
重森はこれ以上の会話は、純粋に雪絵の負担になると考えたようだ。店を出ようと雪絵に言う。
会計のとき、雪絵はせめて自分が食べた分だけでも自分で払おうとしたが、それを重森が制止した。
「いいよユッキー。今日は俺が誘ったんだから俺が全部払うよ。あと俺、女の子に何かお金を払わせるのって、俺のプライドが許さないんだ。そこはわかって欲しいかな?」
「ありがとう……ごめんなさい……」
新宿駅で、雪絵と重森は別れた。重森は小田急線に乗って家に帰るらしい。
「ユッキー、今日は付き合ってくれて、本当にありがとう。なかなかああいった作品を、一緒に観てくれる人って、俺の友達にもいなくってさ。じゃあまた来週大学で!」
「本当にごめんなさい……まさか今日に眼がこの調子になるとは……私も思っていなくて……」
「いいんだよ気にしないで。じゃあまたね!」
雪絵は小田急線の改札を抜けていく重森を見送り届けてから、自宅へと帰ることにした。
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