第29話雪絵と重森その7

「でも笹森さんが教室でリリカルなのはの下敷きを持っていたときには、ビックリしたよ。笹森さんって一見すると、全然そういうのに興味がある感じじゃなかったからさ」

「あれは……実はあれはね……アニメ好きの昔の同級生がくれた物なの……」

「ああそうなんだ。笹森さんにはそんな友達がいるんだね。ちょっとビックリしたよ」

 雪絵は話を遮るように、

「ごめんなさい……実は持病で……今凄い目が……疲れ目の症状でチカチカしていて……まともにお話が出来る状態じゃないの……」

「えっ? 何で? どうして?」

「とにかくごめんなさい……としか……今は言えないの……」

 そうこうしているときに注文していた料理が運ばれてきた。雪絵はスパゲティを、重森はハンバーグを注文していた。

 重森は雪絵に配慮したのか、黙々と食べる。雪絵は眼のせいで、ぎこちなく食べている。

 お互いが食べ終わった後で、重森が話を切り出した。

「笹森さんの眼の調子が悪い中で、こんな質問をするのは申し訳ないのだけれども、笹森さんは普段皆からはなんて呼ばれているのかな?」

「あだ名のこと?」

 雪絵が重森に、そう聞き返すと、

「そう。なんか笹森さん大学でも友達いるようには、見えなかったからさ」

 雪絵は少し戸惑った顔を一瞬見せたが、

「中学のときは皆から『ユッキー』って呼ばれていたの……私の下の名前が『雪絵』だから……ユッキーって……」

 と、とりあえずそう答えた。

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