第28話雪絵と重森その6
少しの予告を挟んで、映画が上映した。瞳に言われた通り、映画版だけは前作を事前に雪絵は見ておいた。
さて肝心の物語は、なのはとフェイトとの、感動の再会のシーンからはじまった。
物語が中盤に差し掛かったとき、雪絵は目の異変に気付いた。
(あっ……今目がチカチカしている……)
そう、約二週間に一回のペースでやってくる、前置きなしにやってくるあの疲れ目の症状だ。その症状のせいで、目が映像を追えなくなっている。
こうして雪絵の目にとっては、最悪の状態で映画は終わった。ちなみにこの症状はメガネのときにでも起こる。六ヶ月おきに通っている眼科医の先生からは、精神の薬の副作用だと言われており、失明につながるものではないから安心して下さいとは言われているものの、やはり気持ちの良い症状ではない。特に、隣に誰かがいる状態では、なおさらそうだった。
映画が終わってから、雪絵と重森の二人は、映画館から少し歩いたところにある、ファミレスに入った。
ファミレスの入り口で、重森が雪絵にこう聞いた。
「笹森さん。禁煙席で良いかな?」
「うん……」と雪絵は答えるしかなかった。
テーブルについて重森が言う。
「笹森さん。今日は付き合ってくれて、どうもありがとうね。なかなかああいう映画って、内容が素晴らしくてもやっぱりアニメオタク向けだから、そういうのに興味があったり、もしくは配慮のある人じゃないと、なかなか一緒には観に行ってはくれないんだよね」
「そう……なんだ……」
重森は優しく雪絵に話しかけてくるが、当の雪絵にとっては、目が疲れ目の症状でチカチカしており、まともに会話が出来る状態ではなかった。
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