第13話お祝いの飲み会その6

一方で雪絵の表情は、相変わらず沈んだままだ。すると瞳が、

「ユッキー元気出しなよ~。念願の慶応の大学生だよ! 来月から~」

 瞳はなんとか雪絵を明るく振舞わせようとするが、雪絵の暗い表情はなかなか明るくなりそうにない。

 瞳と雪絵のやり取りを、横目で見ていた園里が、そこですかさず、

「な~にユッキー、今日生理?」

 などと多少酔いがまわりはじめた園里が、そうやって園里得意の下ネタで雪絵を茶化すと、とうの雪絵は、

「違う……生理はこの前に……ちゃんとあった……」

 と、雪絵はまた力なく答えた。

 するととうとう我慢し切れなくなったのか、見るに見かねた徹也が、

「雪絵の奴、昨晩ちゃんと寝てないんじゃないか? ただ単に寝不足なんじゃないか?」

 と、今度は徹也がそう言った。

 そのやり取りを横目で見ていた今日子は、せっかくSFCとはいえ親の期待に応えて、ようやく慶応大学への進学が叶ったのに、雪絵本人はどうも、完全には……むしろようやく親の期待にこたえられたことに対して、ほとんど喜んでいる様子ではないな……と感じ取っていた。

「ユッキーさあ。慶応の大学に進学って、ユッキーにとって凄くめでたいことなのだから、もっと嬉しそうな表情しようよ~」

 瞳がそう促すが、雪絵の沈んだ表情に、特にこれといった変化は全くと言って良いほど、見られない。

 雪絵がそういった冗談を受け入れられる心の余裕などある状態ではないことは、雪絵を一目見ればわかることだと、今日子は何となくではあったが、悟ってはいた。

(皆もうちょっと雪絵ちゃんの気持ちを、くみ取ってあげようよ……)

 今日子は実際に口には出さなかったが、そんなことを思っていた。

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