第12話お祝いの飲み会その5

 全員に注文した飲み物が一通り行き渡ったようだ。中学生のあの頃のときのように、瞳がリーダー役として、乾杯の音頭をとる。

「それではユッキーの慶応の大学進学決定と、キョンキョンの二十歳を祝って、カンパ~イ!」

「カンパ~イ!」と六人が元気よく掛け声を上げる中「乾杯……」と雪絵は今にも消え入りそうな小さな声で、そう言った。

 やってきたビールををグイと飲んだ瞳が、

「み~さきちゃ~ん。結婚出来た~? もういい歳でしょ~う?」

 そう言って瞳が美咲に酔った勢いで絡む。

「もう結婚なんてする気はないわよ。そのことは八候中学校での授業の雑談のときに話をしたでしょう? あの話をしたときのあの時間には、私の恋はとっくのとうに、終わっっているのよ」

瞳は美咲を茶化すのに飽きたのか、今度は雪絵に絡もうとする。

「ユッキーはお酒飲めないのだから、どんどん食べなよ~」

 瞳は完全に酔っているようだ。瞳はそう言って雪絵に、もっと食べるようにと促そうとする。

 雪絵はただ一言「うん……」と一言言って、先程運ばれてきた鳥のから揚げを、食べようとする。

 そのやり取りをずっと見ていた徹也は、かつて八候中学校時代には、自分といがみ合っていた、ある意味ではライバルでもあった雪絵が、それが今徹也の目の前にいる雪絵が、当時とは全くの別人と化していることに、かなりの寂しさを感じ取っていた。

「しかし橋部さんが、無事に希望通りの数学の学科に『現役で』進むとはねえ……高校数学の勉強を、頑張ったのですね!」

 美咲がそう今日子の努力を労った。

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