第28話 アイテム
「もしもし? そっちはセバスさん以外が全滅したみたいだけど」
「はい、すみません。まさか地中から出てくるとは思いませんでした」
安全地帯まで移動している最中、棗ちゃんからスマホを通じて連絡がきた。
俺が死んだし、向こうも死んだからその間にということだろう。
「地中ってガチすぎやしないか?」
「でも、戦争ならそういうこともあるんじゃないですか?」
「どうだろう。俺はリアルなウォーに参加したことないから分からないけど。それよりもなんかセバスさんから作戦があるんだよね?」
「いえ、作戦は伝えられてませんけど、なんかアイテムというのが解放されたようで」
「アイテム?」
「はい、草地エリアの進入禁止地域にヘリと戦車が設置されみたいです。リーダーである私のスマホに和真様から連絡が来ました」
「はぁ? 嘘だろ。そんなの聞いてない!」
また今回もヘリと戦車が出るのかよ!
もう流石に面白くもなんともない。一度ウケた芸を何度もやるようなものだ。でも、リアルな戦争ゲームをするっていうテーマには沿っているから、質が悪い。
しかし、戦車でどうやってBB弾を撃つのだろうか。
「どうやら、私達には極秘で用意されたようですね。多分、セバスさんと和真さんが考えられたのかと思います」
「やりやがったな、あいつ。いまからグレネードで吹っ飛ばしてやる! というか、戦車を手に入れたらあいつがいる実況ブースに突撃してやろうか!」
俺は怒り心頭だ。こんなことしたら圧倒的にBチームとCチームが有利じゃないか!
敵の二チームがもし手に入れたら、絶対追い掛け回されるに決まっている。この間の暴走族みたいにはなりたくないぞ!
『ここで、お知らせです。プレイヤーの皆さんにはすでに伝わっているかと思うが、戦車とヘリがアイテムとして開放されたぜ。十二分に使いこなして、勝利をもぎ取ってくれよ!』
和真に殺意が湧く中、あいつの声が聞こえてくる、マジでこのゲームが終わったら、戦車であいつを轢いてやりたい。
「よし、草地エリアに行こう! そこに柚梨や
「麓朗さんはいませんが、柚梨さんがいます。今は、私と再スタートの場所に向かっています」
「リスタートの位置は何処?」
「岩石エリアの西です。柚梨さんがそのすぐ近くで麓朗さんは林エリアだと聞きました。ハクさんは?」
「俺は岩石エリア中央寄りの南だよ」
「そうですか。やはり、草地エリアじゃないんですね」
「やはりってどういうこと?」
「私の推察ですが、草地エリアにアイテムが設置され、そこに近いところが再スタートの場所だと不公平なので、草地エリアにはリスポーンされないのだと思います。すでに草地エリアにいる人に関しては仕方がないですが、それも考慮して、草地エリアに人がいなくなってからアイテムが設置されていると思います」
「なるほど。わかった。じゃあ草地エリアの東に集合しようか。そこなら俺と近い。麓朗は遠いけど。あと、セバスさんにはアイテムの場所に来る連中を
「了解です! ではご武運を!」
「ああ」
俺は急いでリスポーンするべく、岩石エリアへと向かう。林エリアを突っ切り、草地エリアをまたいで、岩石エリアに移動した。
そこは、砂地に大きな石が各所に散らばっている場所だった。
障害物になるため、ここで戦闘になれば逃げ隠れすることも出来るが、逆に相手が隠れたいたら分かりにくい。
結構サバゲー向きだ。それにここなら戦車は入ってこれないだろう。
岩石エリアの観察も終わったので、さっそく合流地点へと行かないと。
「あ、なんかいるな」
岩石エリアでちょこまかと動く、人影を見つけた。顔はスカーフで隠れており、分からないがハンドガンを持った軽装の男がいる。
迷彩服や装備を身に着けてないのが謎だが、ここにいるということは敵である。撃てそうだったら、攻撃するのもいいだろう。
どうせ、男が逃げている方向は合流エリアと同じ方角なので、後をついて行って出来るなら棗ちゃん達と挟み撃ちにしてしまおう。
俺は棗ちゃんに連絡を入れ、男の後を付ける。
しかし、岩石エリアを抜けたところで見失ってしまった。結構な身のこなしだった。流石は鍛えられた人が敵なだけはある。
そして、俺は棗ちゃんと柚梨を見つけた。
「おーい」
「あ、ご無事だったんですね」
「二回死んだけどね」
「まぁ、仕方がないよ」
ゲームが始まってから一人でいる時間が長かったから、二人と合流出来て結構安心した。
なんとなく、戦場で戦う兵士の気持ちが分かった気がする。
「それでそっちに男は来てないんだよね?」
「うん。人は誰も見なかったよ」
「私も随分、注意して見張ってましたが、それらしい人は見つけられませんでした」
「了解。じゃあ、もしかしたら、敵はこっちに気付いて逃げたのかもね」
「とりあえず、アイテムがあるエリアに行こう。話をしている時間がもったいないし」
「OK! 俺が一番前に出るから、二人は左右を頼む。たまに後ろを警戒してくれるとありがたい」
「任せといて!」
「私も頑張ります!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます