第24話 動画の企画

「ごちそうさまでした!」


 コンビニ飯に満足した棗ちゃんが、パンっ、と手を合わせる。


「全員食べ終わったことだし、そろそろ今日の話が出来るかな」


「話?」


 柚梨が疑問符を分かりやすく表情に浮かべた。


「近日中に和真とコラボするんだよ。その動画のネタを棗ちゃんが考えてきてくれたから、それの打ち合わせ」


「へぇ、そうなんだ。今度は何をするのかな?」


「じゃ、棗ちゃん企画を紹介してくれる?」


「はい! ゲームの実況動画のユーチューバーさんとのコラボですから、ゲームに関する動画にしようかと思います」


「具体的にはどうするの? スプラト〇ーンとかP〇BGでもするの? 言っとくけど、湊くんはあんまりゲームは上手くないから、面白い動画は撮れないと思うよ?」


「いえ、今回の動画ではゲームの技術はあんまり関係ないです」


「どういうこと?」


「リアルPU〇Gを行います。つまりサバゲーですね」


 棗ちゃんは鉄砲を撃つフリをして説明する。

 俺はその動作と言葉を聞いた瞬間、嫌な予感がした。このメンツで偽物であろうと銃を持つなど、碌な事にならない。

 この間もなぜか戦車が出てきたし、その前はアパッチが登場している。完全に今回の動画向きな面々だ。確実に出現はまぬかれないだろう。 


「軍人とかは用意しないでね。動画が面白くなくなっちゃうかもしれないし」


「ええ、流石にサバゲーのプロとかは呼ばないですよ」


「そ、そうか、それは良かったよ」


 俺は戦車とかヘリを運転する人を呼ばないでほしい、って意味だったんだけど、彼女はサバゲーのプロと勘違いをしたようだ。


「それで、今回のコラボ動画は私達がサバゲーをしますが、和真様には生配信で実況してもらいます」


「生でする意味は何? 私はクオリティを確保するなら編集とリテイク、撮り直しが出来る通常配信の方が良いと思うよ」


「生でする意味は和真様がよく生配信しているので、それに合わせてですね」


「なるほど。企画が企画だから、割とクオリティに関しては気にすることないかもな」


 動画の内容はどうせ大掛かりなものになるだろうから、スケールだけでも面白さはあるはず。

 そこに加えて棗ちゃんの財力で過激な動画に変身するなら、あまり問題ではない。

 事故が起きなければの話だが。


「動画の収録日はいつにするんだ?」


「そうですね、事前準備も併せて二週間後ですね。フィールドや道具は久他里さんに用意してもらいますので、基本的には二週間後まで何も買いに行く必要はないですし、することは和真様と打ち合わせと会場の下見を兼ねたリハーサルくらいです。どうぞ、大体の事はここに書いていますので」


 棗ちゃんは計画表でも作っているのか、それらしいレジュメを配ってくれる。

 ページ数三枚のもので、色々と書き込んであった。


「ありがとう。じゃあ、道具とかの準備は任せるとして、和真との打ち合わせは久他里さんに報告すれば準備できるね」


「お任せください! 要望にはすべて応えて見せますぞ!」


「久他里さん、ありがとうございます」


 久他里さんはいつも動画の出演と裏方の仕事をやってくれている。本当に頭が上がらない。


「そういえば、柚梨は参加するのか?」


「勿論」


「シトラスのメンバーは誰か参加しないんですか?」


山上下とうげ君が参加予定だけどリーダーに関しては今回も不参加だね」


「そうですか、今度こそ皆さんに出会える問思っていたんですけど」


「また、今度何かやろうね。こっちでも面白そうな企画考えてるから」


 ちょっと、しゅんとした棗ちゃんに柚梨がフォローを入れた。


「今年の夏頃に、泉さんが色々とやろうって言ってたし、またコラボできるよ」


「泉さん?」


 そういえば、彼女の事を棗ちゃんにはしてなかったか。


「泉さんは柚梨たちのチームのリーダーで、セブンを作ったのも彼女だよ。柚梨や和真、俺達の高校時代の先輩だったんだ」


「そうだったんですね。先日のコラボの時に挨拶できませんでしたから、是非会ってみたいです!」


「この間は忙しかったから会えてないけど、また時間を作って会う機会をセッティングするよ」


「楽しみにしています!」


 棗ちゃんは屈託のない笑顔だ。

 これは是非、泉さんに合わせてあげないとな。

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